第3話
この世界に来て2日目。正直この世界に来たのは夢か何かなのではと思いもしたが、日を跨いでしまっていたり、2回くらい殴られたが目が覚めなかったことから、ここはやはり異世界なのだろうと考えるようになった。
というより夢かと思いながら過ごしているとだらけ切ってしまい、現実だったと後で知った時に取り返しのつかないことになりそうなので、「俺はこの世界で生きている」と思っていた方がなにかと良さそうだと考えた結果だ。
因みに今日は冒険者ギルドへの登録と、ステータスの作成だ。
前の世界で異世界ものにはまっていたこともありギルドとかステータスというワードにはワクワクせざるを得ない。しかも魔法がある世界だ。創作の世界だと俺みたいな異世界転移者はその世界ではありえないくらい最強なもの。
平凡だった俺が最強か……!正直テンションが上がりまくっているがここは落ち着こう。最強主人公というのは往々にしてクールなものだ。「えっ!俺が最強?!やったー!」なんてあいつらは言わないだろ?
アリアさんも昨日、脳無しは魔力が高いって言ってたしな。いざこの世界の歴史に名を刻みに行きますか!
はたから見れば相当気持ち悪かったであろう俺のところに、アリアさんがやってきた。
「おはよう蓮。今日はギルドにいくんだろ?支度は出来てるのか?」
「ええ勿論。いつでも行けますよ!」
「そうか、その気持ち悪いキメ顔を直したら出かけよう」
えっ……気持ち悪い?キメてたのは事実だが精一杯かっこつけたんだけど……顔洗ってこよ。
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水で顔を洗い、表情をいつも通りに戻し、街へ出た。ギルドまでは歩いて大体20分ほどらしい。その間、俺はアリアさんに色々質問してみることにした。
「アリアさん、昨日脳無しは魔力が高いって言ってましたけどそもそも魔力って具体的になんなんですか?」
元の世界だと、魔力って人を惑わす力とかそんなんだったと思うんだけど、それが高い……?あれか、超モテるってことか?
「そうだな……ではまず前提として、魔法ってのは周囲に漂ってる魔素を吸収して発動するものだ。そして魔力ってのはその魔素をどれだけ吸収できるかって言う、例えるなら水を入れる器の大きさみたいなもんだよ」
なる程結構わかりやすい。つまり脳無しはいっぱい魔素を吸収できるから強い魔法を打てるってことだよな。
その後もいくつか質問や談笑をしているうちにギルドへ到着した。
レンガ造りの2階建て。入り口付近には格闘家のような筋肉隆々の半裸の男性や、ローブを着た魔女のような格好の女性もいる。
おお!すごい異世界っぽい!元の世界だとローブを着てる人なんて変人だし、半裸男なんて逮捕もんだ。それが全く疑問視されることなく存在している。まさしく異世界!
よーし貴方達も中に入れ。そして俺が高ステータスを叩き出すところをみんなと一緒に驚き褒めてくれ!そしたら気分良くなって街の平和とかガンガン救うからさ!
そんなことを思いながら俺とアリアさんはギルドの中へ入る。するといきなり女の子が俺たちのところへ走って来た。なる程、やはり強い奴ってのは滲み出るものがあるのだろうか。
――と思ったが、その子は「アリアさーん!」と言いながら近づいて来た。
うん。知ってたよ。本気でそんなこと思う訳ないじゃん。ジョークだよジョーク。
「お久しぶりですアリアさん!この前はお世話になりました!」
「なに、大したことはしてないよ。ちょっとサポートしただけだ」
近づいて来た子は冒険者らしく、どうやら前にアリアさんにクエスト攻略を手伝ってもらったことがあるらしい。
「ところでアリアさん?お隣の全くさえない感じの男性はどなたですか?」
さえなくて悪かったな!……やっぱりキメて来た方が良かったろうか?
「あぁ、こいつは蓮。脳無しのようでな、ひとまず私の家で預かっている」
「脳無し?!まさかあの能無しですか?魔力が高く、世界の危機を救うとされているあの脳無し?!こんな人が?!」
「黙って聞いてりゃ失礼な子だな!初対面の人に「こんな」って言っちゃいけません!って習わなかったのか?これだから最近の若者は」
「蓮も"レヴィ"も大して年は変わらんだろうが。じじ臭いこと言うんじゃない。あとレヴィ、お前もちょっと口が悪いぞ、直しなさい」
「……はい。でもアリアさん、こんな奴と一緒に暮らして大丈夫なんですか?襲われてません?」
誰が恐ろしいモンスター達を一撃で倒すような人を襲うんだよ。んなもん小学生に相撲取りを場外に落とせって言ってるくらい無理がある。
「大丈夫だ!こんな奴に襲われても逆に返り討ちに出来るしな。それに蓮はそんなことができるほど肝が据わった男じゃないよ」
アリアさんサラッと俺のこと2重にディスって来たよ。2人して俺のこと悪く言いやがって……なんだ?泣かせたいのか?あと一個なんか言われたら泣くぞ!
「それに……蓮は優しい子だよ。絶対にそうゆうことはしない。1日しか一緒にいないがそれくらいは分かったよ」
――やばい、違う意味で泣きそう。下げて下げて上げるとか人心掌握の魔法でも持ってんのかよ、そんなことされたら好きになっちゃうだろうが!
「――まぁアリアさんがいいならそれでいいですけど……あなた、蓮だっけ?アリアさんに迷惑かけんじゃないわよ!分かった?」
この子、ほんとにアリアさんのこと尊敬してんだな。
「分かってるよ。お前が思ってるようなことは絶対にしない、この世に存在する全ての神々に誓うよ。あと、今度会う時までにお前は礼儀を学んどけ!」
「ふん!そう言うあんたはもう少しまともな顔になってなさいよ!」
「整形しろってか!」
「それじゃあアリアさん!失礼します!」
「ああ!じゃあな、レヴィ」
最後でていく時、俺に向かってベーってして来やがった。
覚えてろよ……いきなり最高のステータスを叩き出して泡吹かせてやる。
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「――では蓮。奥に受付がいくつかあるだろ?そのどれかに行って、ステータスの作成と冒険者登録を済ませてこい」
「あの、因みに登録料とかって入りますか?」
もし必要ならば借りなければならない。これが異世界召喚だった場合は国からお金が貰えたりするんだろうが俺の場合一文無しだ。あるとすれば制服の中に入ってた10円しかない。
「いや、料金なんかはないよ。ステータスを更新する時には更新料がかかるが、初回は無しだ」
良かったー!いきなり詰みはなかった。
「じゃあ良かった!――それじゃあ気を取り直して、行ってきます!」
意気揚々と歩いていく俺に対し、アリアさんが一言――
「蓮、どんな結果が出ても落ち込むなよ。大丈夫!初期ステータスはみんな大したことは無い!」
微妙な顔をしながら送り出したアリアさんを見て、ものすごい不安になった。もしかして俺ってめちゃくちゃダメな奴に見られてる?本当の意味で能無しと思われてるのだろうか?
だが安心して欲しい。俺は異世界人だ。ちゃちゃっとステータス確認を終わらせてアリアさんを驚かせてやる!
いくつか受付はあったが、その中でほとんど並んでいなかったところに並び、俺の番になった。俺が並んだところの人は、ものすごい強面で、ヤクザ映画とかに出てそうな風格があった。なる程こりゃ並ばれねぇわな。
「今日はどんなご用件で?」
声も低い、礼儀正しいのが逆に怖い!
「えっと、あの、その……登録をしたくて……すいません」
「冒険者登録ですね、かしこまりました。ではまずステータスをお作りしたいので――その服は脱いでください」
「……へっ?」
なんだか俺の知ってるステータス作成とは異なりそうでした。
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