第7話

 ギルドへステータス更新をしに行く最中、店の店主に絡んでいた貴族の3男ディアス・ネディナと揉めてしまい、1週間後決闘をすることになってしまった。


「・・・アリアさん、なんでこんなめんどくさいことになったんでしょう?」


「はぁ、私が聞きたい。なぁ主人?あいつらはなんであんたに絡んでたんだ?」


 そうアリアさんが聞くと、店主は少し怯えた様子でこう答えた。


「あ・・・あの方々が店にやって来て、商品を買われたのですが・・・その際少し粗悪な商品が紛れていまして、そんな商品を出してきたのだから残りはタダにしろ・・・と、その・・・絡まれてしまいまして」


 横暴貴族すぎるだろ!取り巻きも流石にそれは止めとけよ。助さん角さんお前らがそいつこらしめろ!


 しかもあいつ後継じゃねぇんだろ?なのになんであそこまで威張れるんだよ?親の威を借る狐だな。


「--そう言うことみたいですけどどうします?俺としてはそのネディナ家?に直接チクリに行きたいんですけど」


「まぁそれもいいが、それとは別にあいつは痛い目を見る必要がある」


 そう言うと、アリアさんは少し悪い顔で笑い--


「よし、蓮。今日はステータスの更新は無しだ。このまま帰って修行するぞ」


「はぁ!なんで?」


 今日ようやく脱最低ランク出来ると思って結構ワクワクしてたのに。あんまりだー!


「あの馬鹿には皆うんざりとしていてな。そんな奴の鼻を明かすには、大衆の前で最低ランクの奴に負けるのが一番効きそうだからな」


 えぐいこと考えんなこの人・・・。多分そんなことされたら一生部屋から出てこれないだろ、少なくとも俺なら出ない。どころが自分で人生リタイヤするまである。


「流石にそれはやりすぎなんじゃ・・・」


「じゃあ聞くが、あいつが同ランクの奴に負けたとして、その後なんて言う?偶然だ!卑怯な手を使いやがった!とかそんなことを言うだろう。だがEランクに負けたとあっては、そんなこと言っても誰が耳を貸す?Eランク相手など、卑怯な手を使われてでも勝つべきと言うのが一般的な考えだ」


「このまま放置していれば今日のようなことがまた起こるぞ。お前はその度に助けに行くのか?」


 ・・・まぁ言ってることは分かる。調子に乗った感情を根本から断たないといけないのは理解できた。


「・・・仕方ないか。分かりました、帰りましょう。そして1週間後、あいつを倒す」


 こうして俺達は、ギルドへは向かわず帰路に着いた。

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「--よし!決闘が1週間後になったと言うことで、少し予定は早いが剣と魔法の修行に入る」


 遂にこの時が来た!俺が一番やりたかった修行だ。・・・しかしここで魔法を習得しなければいけないと言うことは--


「もしかしてディアスって魔法使えるんですか?」


「あぁ、奴の魔法は重力魔法[跪拝ラ・グラビティ]能力はそのまま離れた位置に重力を掛けられる魔法だ」


 なにそれ超かっけーじゃん!いいなその魔法--あ、でもあれか。その魔法を俺も使えんのか!ワクワクすっぞ!


「では早速始めようか。前にも言ったが魔法というのは空気中の魔素を吸収して発動すると言ったろ。ではどこから吸収するか、それはずばり体の穴からだ」


 穴?体に?んなもんどこに--


「体には目には見えないくらいの穴が無数に開いているんだ。その穴から魔素を流し、ま方を発動する。これを出来なければまず話が進まない」


 見えない穴・・・もしかして汗腺や毛穴のことか?だとしたら汗腺なんかを開く練習をするってことか?怖いんだが!


「あの、魔法を使うプロセスは分かったんですが、どうやって魔素を流すんですか?もしかしてほんとに穴を開く練習から始めるとか・・・」


「穴を開く?なにを言っている、そんなこと出来る訳ないだろ?」


 --冷たい!そんなこと俺だって分かってるよ!だけどファンタジー異世界だしあるのかなって思ったんだよ!


「魔素の流し方は至ってシンプルだ。それは受け入れること、そして魔素を入れ流れるのをイメージすることだ。普段は魔素の供給過多を防ぐため、入っていかないように体が出来ている。なので戦闘時は逆にそれを入れるように脳に指令を出すんだ。これが受け入れるってことだな」


 うん・・・分かるようで分からん。


「そもそもなんで供給過多でなにがだめなんですか?あればあるだけいいでしょうに」


「魔力というのは器だと言ったのを覚えているか?例えるならその器に魔素を入れて魔法を使うんだ。だが供給過多になると器は崩壊し魔法が暴走する危険があるんだ」


「要するに歯止めが効かなくなるってことですか?」


「まぁそういうことだ。だから普段は魔素が入ってこないようになってるし、入れるときもコントロールしてやらないといけないんだ。それが初心者には一番難しい」


 --そんな難しいこと俺に出来るのだろうか?・・・いや、考えても仕方ない。必死こいて魔法を覚える。それが無理だったら剣で倒す!なるほどこれが精神的支えってやつか、実感しましたマイティーチャー!


 こうして俺の長くて短い1週間が始まった。

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 意気込んで始めたものの、最初はほんとに悲惨だった。まず魔素を受け入れるというが、目に見えていないものを受け入れるというのがいまいちピンとこない。なので魔素の塊だというモンスター、今回はあの鹿擬きをイメージし、それを吸収するイメージをしたのだが、生き物を吸収というのがいみがわからず、頭がショートした。


 剣の修行もかなり滞った。トレーニングのおかげで振れないということはなかったが、どうしても上手いこと切ることが出来なかった。アリアさん曰く「切りたい方向にしっかり力が入っていないから」だそうだ。創作物の連中はどうしてこれが最初から出来るのだろうか?自動切断とかそういう魔法でも持ってんのか?


 最初の3日目くらいまではずっとこんな調子だったのだが、4日目にして剣のコツが掴め、木材程度ならある程度簡単に切れるようになっていた。しかし相変わらず魔法の方は上手くいかず、その度に己の才能のなさに悲観するのだった。


 5日目、もうこの辺りで吸収程度は出来る様にならなければ間に合わない。俺は一度大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせた。魔素を取り込む、魔素は危険じゃない、魔素は友達!色々考え方を変えてはみたものの、どれもしっくり来ない。そんな時、昔やっていたゲームのことを思い出した。倒された敵が霧散し、その霧がプレイヤーの中に入り経験値となる。


「もしかしたらこれで・・・」


 モンスターを倒した想像をし、出てきた魔素を取り込むイメージを行った。すると--


「・・・なんか、体の中に入った気がする・・・!」


「ふぅ、よくやった!これから魔法を使うときはそのイメージを持て。・・・感傷に浸らせてやりたいが時間がない、次は本番。魔法の発動だ」


 やはり成功体験は自信に繋がる。そこからの修行は今までの停滞が嘘だったかのようにスムーズに進んだ。剣の方も技などを作るまでに至った。


 魔法も、6日目の後半までは出来なかったが、イメージと実践の繰り返しにより、なんとか発動することが出来たのだった。


「よし、じゃあその魔法に名前を付けよう!」


「名前、なんで?というか技名ってなんでいるんですか?」


 個人的には技名はすごい好きだが、必要性を問うてみるとイマイチ分からない。


「技名というのはイメージに繋がる。この技はこういう名前・・・と結びつけておくことで発動するときにイメージが湧きやすいんだ。だからどんな魔法でも名前はつけた方がいい」


 名前な・・・。魔法を真似る技、"コピー"とか?いやダサいな。


「普通に魔法名の異類無礙アクセプトで良いですか?」


「・・・面白くはないが、まぁいいか」


 --この人多分俺が素っ頓狂な名前を言うと思って期待してたな、まぁ言いそうになったんだが。


「よし!剣の腕も上々、魔法少し拙いが初めてにしては合格だ!こいつであの馬鹿をぶちのめしてこい!」


 俺は深く深呼吸をし、勢いよく答えた--


「--はい!!」


 長く短い1週間が終わり、いよいよ明日は決戦の日だ。俺の努力とアリアさんの威信にかけて--絶対に勝つ!





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