少年と奇妙な動物との出会い、それにドストエフスキー

罪と罰の登場人物の名を与えられた奇妙な動物と少年の交流と書くと聊か趣が違う。
だが、その動物との出会いと父母との会話は少年にとってかけがえのない物になっているのではないだろうか。
出会いを通じて交わされた会話と少年の心の動きこそ、この話の肝であると私は思う。

小学生の少年にしては理性的過ぎるかと思わぬでもないが、少年時代には言語化できずともこのくらいの世界を各人持っていたかもしれないとも思い至る。
彼の心の動きを読み進め、最後の文章に私は少なからず感銘を受けた。
これは或いは私が息子を持つ父親だからかもしれないが、私はそこに希望を見出した。

今作をどう評価するかは人によるだろう。
だが、非常に興味深い内容である。
是非に一読していただき、この読後感を味わっていただきたいのだ。