第9話

 さぁ、それはもうずいぶん昔のお話ですから、


 二人がどこへ行ったのか、もう誰も知りません


 しかし風とは気まぐれなものですから、


 今日もどこかの山で、背高草を吹き分けて、


 一陣の風が、駆け巡ることもあるでしょう


 そこにいくつもの朱色がはためいて、


 誰かの声が、もの悲しさを運んで来たとすれば


 それはきっと、かつて野分と呼ばれた風が、


 山を吹き荒れていた頃の、名残なのかもしれません。



 終

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いつか野分の吹くところ 神崎 ひなた @kannzakihinata

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