多方面に働きかける書き方

一般的なミステリーは『殺され方』を物語の中で考えるものですが、『死に方』を考えるというミステリージャンルにおいてある種の斬新な変化を与えられたのがこの作品です。しかし、この構築上の変化だけに甘んずることなく、登場人物のキャラクター性に磨きをかけているのが最大の魅力ではないでしょうか。ミステリーの謎の部分とその解決において、キャラクター性がそれらに対する十分な説明になっているからです。読者側も人物の行為に対して納得ができますし、何より小説としての深みが出るように思います。そのため、この作品の読後感が「いいミステリーだった」ではなく「いい小説だった」というものになったのだと感じました。いい小説でした。

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