絶対視の逆転も信仰心があれば起こりうる

まず、構成が面白かったです。「レビューか何かかな?」と思いつつ読み進めていくと、語り手が最も憎んでいる人物がこの話の聞き手であることが分かったところは意外性があってよかったです。ある意味で叙述トリックのような面白い工夫でした。また、最後にあっさりと原作ファンが(言葉足らずな表現で申し訳ないのですが)折れてしまうという結末がよかったです。あれだけ言葉厳しく責め倒していたのに、原作者――つまり、彼の言うところの神の声を代弁していると聞いて、すんなりと折れてしまうのは、お題である彼の『信仰』の強度が計り知れないものだったことを体現していました。ですから、原作信仰の狂気を上回る原作者信仰の狂気で物語が結末を迎えたとしても、それ自体は不思議と腑に落ちるんですよね。