あらすじに惹かれて読んでみたのですが、いやすごい。いいものを読ませていただきました。非常に読みやすい文章で、読み終わった後に文字数を三度見くらいしましたね、これ一万字弱だそうで。企画の文字数上限ギリギリの長めの作品ですが、すごくスラスラ読めます。体感はその半分くらいです。それにも関係するのでしょうが、表面的な展開はわかりやすく簡潔です。物語の中でしっかりと起承転結が収まっています。しかしですね、だからと言って物語に深みがないわけではありません。いやむしろ物語から受け取れる意味としては、非常に奥深いものを感じます。テーマの『信仰』を丁寧になぞる展開ながら、終盤の意外な事実の判明、それに続く結末がきれいにまとまっています。綺麗に形作られた小説は、それを読んでいるだけで心地よくなるんですよね。小銭をきれいに積み上げて作品にする『コインタワー』ってあるじゃないですか。ちょうど、それを見ているような感覚に近いです。