着物と薄荷と優男。一味違う、恋愛譚。

物語は、オーダーメイドの着物のための生地探しから始まる。
なんとも粋だ。あまりに自然でリアルな描写に、私は二話目までノンフィクションだと信じ込んでいた。

匂い立つように鮮やかな薄荷の着物。芭蕉布の優男。ひらひら揺れるクロアゲハの兵児帯。
溜息が出るような、着物の描写もさることながら。

犬のように一途な彼と、素直になれない彼女。不器用な恋愛模様が、しみじみと沁みる。

薄荷の思い出が今に重ねられ、二人に寄り添う。ラストが良い。いつまでも、薄荷の薫りに包まれて、味わっていたい。

一味違う恋愛譚。ぜひ、あなたも味わって下さい。