第13話 ロボケン・アンコントローラブル!!
ジャンピング・ジャンクの地下室。
日にちは木曜日。
今日を含めても、作業できる日は残り二日だ。
次々々世代型アンドロイド・イヴちゃんを土曜日の体育祭までに間に合わせなくてはならない。
間に合うかどうかが不安だったけれど、急ピッチで進めた結果……
完成した。
「先輩……!」
「ああ……!」
「マキナちゃん……!」
「…………!」
「遂に……完成だ!」
イヴちゃんは、高さ一メートルほどの鎌倉大仏の形をしていた。
「設計図と違う!!」
「ま、マキナちゃん? わがはいたち、教えられたとおりにつくったのだが、これで合っているのか?」
黒髪・黒褐色肌・金の瞳の幼女マキナちゃんがメモに何やら書き込み、僕らに見せる。こう書かれていた。
〝まさがえたかも〟
「間違えてるじゃないか!!」
「まあ落ち着きましょう先輩。イヴちゃんが可愛くないのは残念ですが、走れさえすればいいんです。マキナちゃん、これ、最後に『アナザー・マインド・シード』さえ取り付ければ、ちゃんとふたつの脚で走れるんだよね?」
マキナちゃんは力強く「!」と頷くと、メモをバシンと僕のお腹に叩きつける。〝みてててて〟と書かれていた。見ていて、という意味だろう。
彼女はコントローラーを手に取って何やら入力している。
すると大仏イヴちゃんが、胡座の状態のまま下からジェットを噴射した。
「「浮いた!?」」
大仏イヴちゃんはそのまま、地下室をびゅんびゅん飛び回る。
「「いや脚で走って脚で!」」
大仏イヴちゃんは後光機能を使用して地下室をパーティーな光で満たし、口のスピーカーからダンスミュージックを流し、マキナちゃんはそれに合わせてぴょんぴょん踊る。
「「マキナちゃんが踊りたいだけじゃん!」」
やがて満足したのか、マキナちゃんは踊るのをやめて大仏イヴちゃんを着陸させ、僕と先輩に向き直った。
ちっちゃな胸を張って、得意げに鼻息を吐く。
「!!!」
「いやその機能いらないよマキナちゃん」
「っ! っ!」
「僕の服を引っ張って……炭酸を要求してる!? あげないよマキナちゃん! 真面目に手伝ってくれないと!」
マキナちゃんは僕のお腹にバシンとメモを叩きつけた。なんで毎回叩くの。
「どれどれ……」
〝たんちんくれないと もっとへんなふうにする〟
「変だってわかってやってるの!?」
〝ながしそうめんきのう とか つける〟
「ちょっと気になるけどいらないよ!!」
そんな会話をしていると、また大仏イヴちゃんが動き出した。
「志摩、なんかイヴちゃんの目が光っているぞ」
「本当ですね。マキナちゃん、また変な操作したでしょ」
大仏イヴちゃんはシュゴオオと再び浮き上がり、ホバリングしながらその場で横に回転している。
「な、何なのだ? 様子がおかしいぞ」
「マキナちゃん、何しようとしてんの?」
問いかけても、マキナちゃんは応えない。
それどころか……
冷や汗を垂らしている。
「マキナちゃん?」
「?????????」
「えっ嘘でしょマキナちゃん。何が起きてるのかわかってないの!?」
「?」
マキナちゃんは冷や汗を滲ませながらあざとく首を傾げた。
「ほんとにわかってなくてごまかす時のやつだ!!」
「志摩! イヴちゃんが!」
回転はどんどん激しくなっていく。マキナちゃんが慌てて手元のコントローラーをガチャガチャするが、大仏イヴちゃんの動きは止まらない。今度はまばゆい光を発し始めた。
そして次の瞬間、
地下室の床をぶち抜いて下の階へと突き進んでいった。
「…………」
「…………」
「…………」
下の階から『ばごん!』『ばごん!』『ばごん!』と壁が壊されていくような音が聞こえてくる。それも小さく、遠くなっていくということは、イヴちゃんはどんどん下へ下へと進んでいるのだろう。
そんな……
せっかくつくったイヴちゃんが……
「暴走、した……?」
「そうみたいだな……」
「~♪」
「マキナちゃん、いま口笛吹きながらずらかろうとしたでしょ」
「???」
「ごまかしてもダメだよ!? どうするのこれ! と、とにかく下の階へ探しに行かないと。先輩、行きましょう!」
「志摩……でもここ、地下何階まであるのだ!?」
「正確な階数は僕も父さんも把握してないんです。マキナちゃんが勝手に増築してるので……」
「なんだそれは……。マキナちゃん、地下は何階まであるのだ?」
マキナちゃんは床に『ころん』とお尻をついて、「!」と両手両足を開いて突き出した。
「両手両足の指の数……ってこと?」
「二十階まであるのか!?」
「!!!」
「あ、ドヤ顔してる……」
「ドヤ顔してる場合じゃあないぞ……! イヴちゃんを探しに行かねば! さあ行こう、志摩、マキナちゃん!」
「先輩!?」
積極的な先輩を見て、僕はハッとする。
感情を失わせられてしまったとは思えないほどに、照れたり、驚いたり、笑ってくれるようになっていた先輩。今の時点で既に急速に感情が戻りつつあるのだ。
地下には天才エンジニアたるマキナちゃんが発明したたくさんの機械がありそうだ。何が起こるかわからないその場所でなら、先輩の心も刺激されて……以前の先輩のようなエネルギーをもう一度手に入れられるのでは?
大好きな先輩を、もっと好きになれるのでは!?
「よっし! 先輩、行っきましょーう!」
「志摩がノリノリになっている!?」
「!!!!!!!」
僕と先輩とマキナちゃんによる、地下世界の大冒険(?)が始まった!
ロボケンダッシュ!! かぎろ @kagiro_
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