主人公・今浜瑞穂はリサイクルショップでアルバイトをしている。なかなか業績が上がらない中、元せどりで「強欲な仮面」と呼ばれる速野渚が入社してきて…?
リサイクルショップを舞台にしたお仕事小説。めっちゃ面白かったです。
リサイクルショップでどういった仕事をしているのか、裏側を詳細に見せてくれます。良い状態のまま保存していて、いざお店に持っていったても、十円、百円の買取価格。いらないから売ろうとしているけれども、どこかモヤモヤしませんか?
速野は、良いものは良い、ダメなものはダメときっぱり査定をおこなうので、読んでいて気持ちが良いです。
威圧的な態度をとるお客さんをスパーンッと成敗するシーンは爽快ですし、思わず笑ってしまう場面もあって、楽しく読むことができます。文章も読みやすくてどんどんスクロールしていっちゃう。
また、ひたむきに頑張る瑞穂をはじめ、魅力溢れるキャラクターがたくさんいます。ときに意見がぶつかっても、一人ひとりの得意分野や良さを互いに理解し、チームとしての信頼関係を築いていく様子に心躍りました。誰かが困っているときに自然と助け合える…素敵です。
最高のお仕事小説!ぜひ読んでみてください。
赤字続きのリサイクルショップ「イエローブック森泉店」。高校3年間、そこでバイトを続けてきた今浜瑞穂はそんなお店の将来に不安を抱いていた。そんな現状を変えるべく社長が新たに雇ったのが速野渚。彼は一部から『強欲な仮面』と呼ばれるせどり――いわゆる転売屋――として有名な男だった!
速野がお店を立て直す様子をバイトである瑞穂の視点から描くお仕事ものの本作品。作者が元ゲームショップ店長ということもあってか、ディテールがとっても細かい! 本やゲームを売り買いする際にどこを重要視するかせどりの観点から解説するのも面白ければ、赤字続きなのにあえて営業時間を減らす大胆な展開など、お店を改革する経営サクセスストーリーとして大変良くできている。
しかし働いているのはあくまでも人間、論理的に正しいやり方であっても、これまでやってきたことを否定していけば当然反感も買うことになる。本作はそこを誤魔化さずに、そこで生まれる他の社員たちとの対立をしっかり人間ドラマとして描いているのも実に良い。
ただ儲かれば良いとするのではなく、読者も働きたくなるような職場が出来ていく過程が心地いい、とっても素敵なお仕事小説だ。
(「頑張る経営者!」4選/文=柿崎 憲)
世代が近いからとか趣味が近いからとかで、やっぱり感情移入する部分も作者さまとは共通点が多いのかもしれませんが、やっぱりあの中古本屋、中古ゲーム屋で「お宝を、より安く!」と血眼になって探していた頃のワクワク感、これをそのまま感じることのできる作品だったと思います。
おそらく作者さまは、ただの客として店に出入りして青春時代を過ごしただけではなく、業界で働くことで作品に描かれているような店の裏側、業界の情報を知り得たのでしょう。
それでも「現実はこうなんだ」というクソつまらないリアリズムではなく、夢とワンダーがしっかり詰まっている内容になっていることが、この業界、このお仕事に対する作者さまなりの愛情のようなものが見えるように思います。
この作品は、いわゆる「もしドラ」タイプのビジネス啓発テイストを持った「お仕事ワンダーもの」とでも言いましょうか。ライト文芸には多いのかもしれませんし、実はそれほど多くないのかもしれませんし、まあ不勉強な私にはよくわからないのですが「リアルの中にあるワンダー」を大事にされた力作であると思います。
青春時代、少ない予算を握りしめて中古本屋を回り、中古ゲーム屋を回り、中古CDショップ、中古ホビーショップを回り、欲しいもの、お宝を脚が棒になるまで探し回った、そういう経験のある方は是非お読みください。
きっと、あの店で素敵な品物に出会ったときと、同じような感覚をこの作品からも、味わえると思いますよ。
本作はとあるリサイクルショップを舞台とした、いわゆるお仕事ものの物語である。
しかも変に奇をてらわず、また無理な恋愛要素もない。
だが圧倒的に面白い。
それはなぜか。
すべての働く人間の心を打つからである。
そして「商売」の本質とは一体どこにあるのだろうかと考えさせられるのだ。
おそらくお話の多くは作者が実際に経験したことを元にしている。
業種は違えど、その多くは働く人間なら誰しもが一度や二度はぶつかる壁。そして乗り越えてきた試練だろう。
やり過ぎたこと、やらなかったこと。
やっておけばと後悔したこと。
そうした苦い思いが文面を通して、香ってくるのである。
ビジネス指南書?
いやそうではない。
これは働くすべてのひとへのエールと、失敗の記録である。
詳しくは本編を。
けっして損はさせない。
作者であるタカテン氏の力量を信じてほしい。