概要
ようこそ――喫茶、三毛猫へ。
喫茶、三毛猫。
古ぼけた深緑の汽車が、ソーダ水の海と湿地を抜けた先。
その喫茶店の屋根は、ちょっとした庭になっている。赤茶けた伸び放題の枯草が、一面を覆っているのだ。濃いピンク色のミニバラ、綿毛のようにも見えるシロツメグサ、薄い黄色のガザニアたちがひっそりと彩りを加えていてくれる。崩れかけたレンガが、敷地を示すせめてもの境界線。
ま、ここら辺は、マスターの趣向だったり何だったりで変わるものさ。
ステンドグラスのはめ込まれた真っ黒な入り口に、大小さまざまで歪な形をした石畳が続ている。年代物の、深い焦げ茶色をした壁は、覆われた蔦の隙間から僅かに見えるだけ。薄紫のシランが喫茶店全体を囲んでいる。このあたりはだいたいずっと、陽の沈んだ後の薄闇に包まれているんだけれど、そんな光が磨り硝子の窓から
古ぼけた深緑の汽車が、ソーダ水の海と湿地を抜けた先。
その喫茶店の屋根は、ちょっとした庭になっている。赤茶けた伸び放題の枯草が、一面を覆っているのだ。濃いピンク色のミニバラ、綿毛のようにも見えるシロツメグサ、薄い黄色のガザニアたちがひっそりと彩りを加えていてくれる。崩れかけたレンガが、敷地を示すせめてもの境界線。
ま、ここら辺は、マスターの趣向だったり何だったりで変わるものさ。
ステンドグラスのはめ込まれた真っ黒な入り口に、大小さまざまで歪な形をした石畳が続ている。年代物の、深い焦げ茶色をした壁は、覆われた蔦の隙間から僅かに見えるだけ。薄紫のシランが喫茶店全体を囲んでいる。このあたりはだいたいずっと、陽の沈んだ後の薄闇に包まれているんだけれど、そんな光が磨り硝子の窓から
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