新訳(勝手に意訳)With or Without You

@shinoto

I can't live with or without you...




 昔買ったU2のアルバム(Joshua Tree)が見つからずに困っていたところ、職場で知り合った先輩が、この歌の歌詞について語っていたことを思い出しました。


 彼が言うには、この歌はIRA、北アイルランドにおけるイギリスとの関係を嘆いたもので、IRA所属の女性を恋人とした男の悲恋を掛け合わせたものだと聴いた覚えがあります。


 当時の私は、歌の歌詞よりもメロディ重視だったので、相槌を打つくらいしか出来ず、そういったものだと思い込んでいました。


 懐かしさも相まってネットで調べてみたのですが、歌の作詞者は、一家庭人である自分とアーティストである自分のギャップに苦しんでいた、という解説を公でされていたそうです。


 確かにこのアルバムにおいてのU2メンバーのイメージは、Tシャツにジーンズ姿だったのですが、その次のCDジャケットからは派手な革ジャンという、まさにアメリカンドリームを体現したかのような代わり映えでしたので、その通りで間違いはないでしょう。


 その反面、IRAに対しては、彼等に否定的な表現をしたということで、脅迫を受けたこともあり、政治的な発言は控えられたのかもしれません。


 若しくは先輩が、同じくU2のSunday Broody Sunday という歌が関連しているという前提で話していた仮説だったのでしょうか。


 それを確かめるには、その先輩とは既に音信不通になっているので不可能ですが、ここは敢えて彼の案を採用して、ここは一人の物書きとして、自分なりの解釈をしてみたいと存じます。


 著作権等、問題があると思われますので、歌詞そのものの表記はしませんので、気になる方はネット等で検索してみて下さい。


※1

 君の瞳に石碑が映っているところが見えるよ。

 そんな君(がいる石碑)の傍らにイバラが絡みついているよ。

 僕は君を待っている。

※2

 運命の女神の悪戯と気まぐれにより

 僕は針のムシロの上で待たされている。

 君がいないのに、僕は待っている。

 君がいてもいなくとも、君がいてもいなくとも。

※3

 嵐の中、僕たちは岸へと辿り着く。

 君は僕に全てを与えてくれるけど、僕にとって全てではない。

 僕は君(が全てを打ち明けてくれること)を待っている。


 君がいてもいなくとも、君がいてもいなくとも。

 僕は生きていけない、君がいてもいなくとも。

※4

 ついに君は、その正体を現す。

 ついに君は、その正体を現す。

 ついに君は、ついに君は…

 ついに君は、その正体を現す。

※5

 僕の両手は縛られ、身体は痛めつけられ、

 君は、そんな僕を放っておけなかったけど

 勝ち得るものはなく、これ以上失う物もなくなってしまう。

※6

 なのに君は、その姿を現してしまう。

 なのに君は、その姿を現してしまう。

 なのに君は、なのに君は…

 なのに君は、その姿を現してしまう。


 君がいてもいなくとも、君がいてもいなくとも。

 僕は生きていけない、君がいてもいなくとも。



 ※1は、映画の冒頭にあるような、墓の前で亡くなった彼女を偲んでいて、男は彼女があの世から迎えに来ることを望んでいるが、墓石にイバラが絡みつく位の月日が経っている。


 ※2の女神の悪戯~とは、彼女がイギリスで活動しやすい様に、現地で恋人役として選ばれた男が、その運命を皮肉ったもの。彼は彼女の本心に気付きながらも、満たされない日々を耐え凌でいた。


 ※3の嵐の中、岸~は、かりそめの恋人同士でありながら、いつしか本当に愛し合う仲となる二人。彼は確かに彼女の愛は感じるが、彼女が秘密を隠したままであることが不満。


 ※4、そんなある日、彼女はテロリストとして活動し、公に手配されてしまう。


 ※5、彼は、彼女を追う当局に拘束され、厳しい尋問を受ける。彼女は彼を見捨てず解放しようとするが、接触は出来たものの彼の身柄を勝ち得ることは出来ずに、これ以上失う物がなくなる、つまりその命さえ落としてしまう。


 ※6は※4とまったく同じ歌詞なのですが、※5の状況的に変えてみました。



 彼女がいないと生きていけないくらい愛してしまう。しかし、テロリストと関係することは、社会的に許されない。これが君が一緒でも、いなくても生きていけないという、私の解釈です。


 まるで映画にありそうな話ですが、ひょっとすれば私が知らないだけで、実際に存在しているのかもしれませんね。




 さて、この解釈の元となった職場の先輩。そんな彼と私は、自分では友人といえる関係だったと思いますが、果たして向こうはどうだったでしょうか。


 どうであれ私は、音信不通の彼がいてもいなくとも、図太く生きておりますというオチですが、どこかで彼が読んでくれていることを願って、この話は終わりとさせて頂きます。


 因みに私の探しているCDが、実はその彼が借りたまま、お互い忘れているというベタな展開かもしれません。もしそうであれば、どうぞ笑ってやって下さいませ。

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