ワーカーホリック

シェンマオ

第1話

最近、強盗殺人事件が多発している。

おかげで特殊清掃員を務めている私は毎日忙しい限りだ。


東に行っては汚れた部屋を綺麗に掃除し、西に行っては染み付いた腐乱臭を取り除く。そんな毎日が続いている。


人を殺すにしても、もう少し綺麗に殺せないものだろうか。不謹慎ではあるが、仕事中はふとそんな事を考えてしまう。

何せ人だったものの残骸や、異様な臭いと向き合っていては、コチラの気がおかしくなる。

時折こうやって物思いに耽けるのがこの仕事を上手くこなすコツだ。


しかし悪い事ばかりではない。

清掃の仕事が増えれば会社からボーナスが出るのだ。

このペースでいけば、間違いなくそれなりの金額が貰えるだろう。


実はそのお金の使い道も決めてある。

新しい包丁を買うのだ。

最近刃こぼれが酷く、満足な切れ味が出せなくなってしまった。

だから、次に買うのはもっと頑丈で、長持ちする奴にしよう。そう決めていた。


さて、今日はこのぐらいにしておこう。

私は手に持った包丁を袋にしまい、上着を羽織って部屋を出た。


空にはまだ朝もやがかかっている。


仕事の後は寄り道が出来ない。

基本的に家まで直行して汚れやら臭いを風呂で一掃しなくてはならないからだ。

しかし、今日はその必要も無いだろう。

どうせ、早ければ今夜にでも清掃の仕事が来るのだから。

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ワーカーホリック シェンマオ @kamui00621

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