どこまでも真白く染まる情景の美しさ

 雪に閉ざされた冬の小屋、管理のために冬季の間のみ住み込んでいる主人公と、そこに現れた不思議な来客のお話。
 真っ直ぐに胸を打つ、優しい出会いの物語です。まさにタイトルに偽りなし、しっかり『雪と小屋』のお話で、でもそれがただの雪や小屋に終わらず、様々な美しい情景を想起させる起点として作用しているのが凄まじかったです。若干なに言ってるかわからない感じの感想(レビュー)ですが、例えば舞台の上に椅子と机だけがあって、それが役者の演技や演出効果により場面ごとに異なる場所を表現するかのような、そんな演出(というよりは構成?)の妙を感じました。
 また単に想起される情景が美しいばかりでなく、というかなぜ美しく感じられるのかの答えでもあると思うのですけど、これらの舞台設定や道具立てが、そのままキャラクター造形に直結しているところが最高でした。『雪と小屋』を中心に、絵的な部分から舞台設定、人物の心情からストーリラインに至るまで、きっちりひとつなぎになって相互に連携している印象。そういう意味で、あるいはそれがあるから、この作品は美しく感じられるのだと思います。
 あと個人的な趣味としては、表現というか語り口の手触りが好きです。冬の冷たさや室内の暖かみを超えて、一足飛びにその厳しさやホッとする気持ちに肉薄してくるような、事象の切り取り方と書き表し方が魅力的な作品でした。

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