不可解な謎と初恋の物語。

奇妙な現象に翻弄される、少年少女の初恋物語です。
父親の暴力に苦しみつつも真っ直ぐに生きている主人公・霧島くんと、不思議な美少女・冨士崎さんとの交流が微笑ましく、それでいてどこか寂しげで、心地の良い甘酸っぱさが感じられる次第です。同時に、二人の密会場所である「廃屋と化した館」に纏わる奇妙な謎、館の謎と過去の事件を調査している組織の存在が、惹かれ合う二人を試すかの様で、先の展開が気になる構造となっています。
抑制の効いたトーンで静かに紡がれるストーリー、終盤に向けて徐々に解かれて行く謎、ラストの意外な展開、品良く纏まった初恋物語でした。