004 強制捜査
朝華が支局長室に入るとそこには捜査三課長の
「事情聴取終わったか?」
エレーナ・ヒル・カシイ支局長は朝華に問う。
カシイ支局長は名前から見ての通りハーフである。日本人の母親とオーストラリア人の父親を持つ。S.M.A.R.Tアカデミー出身の内部生である。アカデミーの47期生であ。S.M.A.R.Tのアカデミーは『黄金時代(世代)』と呼ばれる時期がある。『黄金時代』は他の世代のアカデミー生と違い飛び抜けて優秀な者を多く輩出した時代を指す。『黄金時代』と呼ばれるのは、44〜47期生である。
カシイ支局長はアカデミーを次席で卒業している。だが他の世代の次席とは格が違う。『黄金時代(世代)』の次席なのだ。それだけでも優秀だということが分かる。
しかし、カシイ支局長の今の役職は支局長で上等捜査官である。他の47期生は彼女と同じ上等捜査官(権限レベル6相当)か准特別捜査官(権限レベル7相当)である。
カシイ支局長は、上等捜査官なのに権限レベル7である。
S.M.A.R.T日本本部(東京)内では「自分の意志で降格したんじゃないか」という噂があるぐらいこの点に疑問を持つ者は多い。
話を戻す。支局長室に来た朝華は、箱崎が話していた『魂』について報告した。
「千々和、知ってるか?『
「いえ、見たことも聞いたこともありません。支局長は?」
「私も見たことも聞いたこともない。和多田、『魂』について調べてくれ」
「了解しました。」
そう言うと朝華は部屋を退出した。
「『魂』とは一体何なんだろうか…」
カシイ支局長が呟く。
***
箱崎を襲撃した犯人が筑頭会だと目星をつけた基肄隼人率いる捜査三課一係は
一係は筑頭会本部の建物のドアの前で突入の準備をしていた。ちなみにS.M.A.R.Tは諜報機関であり、超法機関でもあるため、本部の強制調査に令状は必要ない。
強制調査は一係のみで行うことになっていた。
係長の
の計4人である。これに箱崎衛矢三等捜査官を加えた5人が捜査三課一係のメンバーである。
筑頭会本部とされている建物は3階建てであり、S.M.A.R.Tは事前に見取り図を含め家具に配置など様々な情報を得ていた。そこは手抜かりない。
「補充要員いないんですか?」
筑頭会本部の玄関前で浜崎が基肄に問う。
「いないよ。箱崎の分も君が働いて」
基肄は内心、不安に駆られていた。
箱崎は福岡県警の刑事出身の捜査官で、いわば『外部生』であり、その分優秀で、「抜けた穴を埋めるには何人で埋めればいいのか……」と考えていたが途中で基肄は考えるのをやめた。
「よし、今から突入する。1、2、」
基肄を含め4人が拳銃を構える。皆、防弾チョッキを着用し警棒と拳銃を所持している。
「さん」
基肄は建物の玄関部分のドアを開ける。
まず、不思議に思ったのは、ドアに鍵がかかってないことだ。
(事務所みたいなやつだし、鍵閉めれれてなくても問題ないか、)
基肄は頭の中で呟く。この件は即解決した。
「クリア」
「クリア」
「こちらもクリア」
4人の捜査官が隈なく建物を探したが誰一人いなかった。
(マジかよ、)
基肄は焦った。
(すでにS.M.A.R.Tが強制調査するって言う情報が漏れてたのか?)
基肄は、建物の各部屋を探す。が、誰一人もいない。
残すは、最後の3階の南側の部屋のみ。
基肄は、最後の部屋のドアを開け侵入した。
その部屋の真ん中の机には四角い木箱が置いてあった。
その木箱を開けると中にはタイマー付きの時限爆弾が入っていた。
木箱の中の時限爆弾は5という数字を表示していた。
つまり、5秒である。偽物かもしれない、基肄はそう考えたが、
「皆、伏せろ」
咄嗟にそう言った。
……2………1………0
その瞬間建物は突如起きた爆発によって崩れた。中にいた一係の皆も。
鋼の捜査官 大山航 @nk20030925
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