緑の眷属☆解決編

 ホラーとしての、薄気味悪さが半減しますが、コズミック・ホラー的、もとい、クトゥルフ神話テーブルトークRPG的にはなくてはならないということで、秘密を一部公開したいと思います。

 結局、全部じゃないんかいという、ツッコミがありそうですが、モヤモヤした感覚は大事ですからね。

 解決編とはいえ、緑の眷属だけ、というところから、お察しください。

 

 まず、緑の眷属の本来の姿は……『梅』そのものです。

 コンパクトサイズで持ち込みやすく、なおかつ、口から摂取しやすい形状なんですよ。

 万能薬として、村では伝わっていますが、緑の眷属の本来の行動パターン……中に入り込んだ人間を生かすために働いた結果にすぎません。

 緑精大神が人間に緑の眷属を渡す理由は、人間がどのような病やケガで『梅』をたよるかという観測のためですからね。緑の眷属は主のため、人間の体に入り込み、ミ〇ロ決死隊のごとく、人間の体内で毒やら病、そしてケガと闘い、造血やらホルモンバランスを整え、治療を施します。だいたい、二週間で悪いとこを全部治して、体内から下の穴からサヨナラします。出す機能から出るのがお互い一番ダメージ少なくて済みますからね。

 時には、憑依してきた悪霊や呪いといった、普通の人間の手ではお手上げの怪異もうち滅ぼします。緑の眷属は治療や解呪を得意としているのです。

 しかし、この、悪霊や呪いにも対応しているところが、胎児のっとりにもつながるわけです。

 悪霊にも、人面瘡など、体にできた傷などが顔などを持ち、意志を持ってしゃべったり物を食べたりする妖怪がいます。緑の眷属は体内に潜むそれらを取り込み、二度と体内に結合させないように、効率よく排泄。あとは、トイレの神様の導きのままに、川の流れのままに。緑の眷属は体内からクールに去ります。

 あとは、自力で報告のため緑精大神のもとに帰ります。

 悪霊を取り込んだ純度が高い緑の眷属は、悪霊の怨念が強ければ強いほど、その力を利用して、ときには瞬間移動なんかして緑精大神のもとに戻れるわけです。そして、人間に寄生するタイプの悪霊ごときが、神に勝てるわけがないので、とっとと祓われるという。

 寄生タイプは泣いていい状況です。

 と、その要領で……胎内にいる赤ん坊も緑の眷属からすれば、異物と判定されてしまうわけです。そして、肉体を取り込むことによって、純度の割合が低下。人間の赤子によく似た緑の眷属として、生まれ落とされる、わけです。

 一定の純度に回復するまでは、周りの環境に合わせて、遺伝子データを参照して成長。人間の脳の機能は最後の最後まで模倣し、それこそ緑精大神のもとに戻るまで、緑の眷属視点では残しています。

 ここで問題なのは、緑の眷属視点、というところ。

 劇中の、緑の眷属たちの思考や理念がバラバラだったのは、脳の機能を残す部位がバラバラだったから。

 感情を司るところを最後まで残すのは、周りの環境に合わせないと、という自衛によるところが大きく、今回の犯人はそれが憎悪に極フリだったゆえに、葵の一族とそのシンパたちを殺すという選択ができたわけです。

 しかも、緑の眷属の本来の機能が封じられるぐらいの、激しい感情。

 人間みたいな、緑の眷属になったわけです。


 犯人がほかの二体と違い、人骨を摂取する描写がなかったのは……普通に骨を食べていたから。それにつきます。

 ゼリーの成分のゼラチンに骨が入っていましたし。煮干しといった小魚は丸ごとなので骨ももちろん食べれます。スペアリブ、圧力鍋のコンボで、骨までトロトロにしたり、イワシのスナックなんかはもろに骨です。もちろん、自分でも揚げて食べていたのかもしれません。

 骨しか栄養にならないのは、知りませんでしたが、自分のことなので、これを食べれば腹が満たされる感覚はあったわけです。いい歳していたので、嘆かず、いろいろ自分で試したのでしょう。


 犯人が『梅』を売買したのは、まぁ、葵の一族とそのシンパたちによって、村の経営がガタガタにされ、財政難だったから、高額取引される『梅』を売ってなんとかしなければならないという、世知辛い理由もありますが……実際、『梅』しか難病を治療できないという現実があります。緑の眷属なってしまうかもしれないが、治療する手立てがあるのに、見殺しにするというのは、良心が痛みます。ただし、誰が緑の眷属になるか、記録に残しておこうと、葵の一族の売買リストを参考に、ノートに記録を残しておきました。

 事件発生後は、ノートを家や役場に置いておくとヤバいので、人が来ない場所かつ安全な場所として、いったん、分社の中に保管したわけです。

 着き止められなければ、今年度の『梅』とともに、回収したのかもしれません。


 で、緑精大神が犯人の緑の眷属を放置していたのは、誤差の範囲内だったからです。放置していたのも、悲劇の元だったのですがね。悠久の時を過ごす緑精大神にとって、緑の眷属が十年単位で行方知れず、は慌てるものではありません。

 むしろ、電波系悪霊と対決する羽目になったのか。救援要請がないということは、時間がかかるが、解決するめどが立っているとみなし、めんだし大祭まで干渉しませんでした。


 と、背景はこんな感じですね。

 邪悪なのは、怪異そのものではなく、それを悪用する人間。

 怪異はあくまでも隣にいて、良き隣人のようにふるまい、様子を見ている……正気と狂気の境で怪異は、こちら側を興味深そうに覗いているのです。


 ……それに、神が本気で怒ったときは、だいたい全滅エンドなので、悲痛を感じるまでもなく終わっていることのほうが多いでしょう。善悪関係ないのも、それはそれで怖いですけど、ね。

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僕と窟拓村めんだし大祭 雪子 @akuta4

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