00話はプロローグで、主人公は01話からの登場です。
00話はもう一人の主人公。魔獣を狩る「ゲイザー」ウルカの話。彼女の魔獣に対する憎しみとゲイザーとしての誇り、そして魔獣を駆逐するためにはどんな非情も辞さないという強い意志が感じられます。
本編となる01話からは少年が主人公。出生に関して引け目を感じる彼は、兄弟や同世代と溶け込めないでいた。そんな中、ある事件に遭遇して、彼は「能力」に目覚める……
かなり作り込んだ世界観とそれを表現するのに相応しい作風でイメージが膨らみ、ハラハラ、ドキドキの臨場感を味わえます。
全十話ということで、これから少年の成長を綴るお話になると思いますが、本当に楽しみな作品です。
本作の第一節は、作品世界に生きる魔獣の説明から始まります。「物語」を早く読みたいと願う読者にとってなんとも肩透かし。しかし、古い博物学を思わせる描写は実に詩的で、短いにも関わらず魔獣の実在を感じるようになります。
私たちが生きている世界とは違う世界で、生きている者が居る。その実在を感じさせるには、描写を誠実に積み重ねる必要があることを、作者は肌で分かっているのです。
描かれた世界は重くて、厳しい。戦士になれば覚悟は負わなければいけない。その重い物語を読み進めるうちに読者は思うのです。こんなこと、自分の日常には無かったな、と。
異なる世界を旅する、物語の醍醐味を存分に味わわせてくれる作品です。
矢口高雄氏は、いわゆるマタギにかかわる漫画を数多く描いている。冷酷非常にして美麗至極な大自然のドラマが、本作の第00話を読みながら思い起こされた。
むろん、本作と矢口高雄氏の漫画には一切関連はない。しかし、恐るべき猛威に怯えて理性を置き去りにした村人と理知的で沈着冷静ながらも余所者たる立場に諦観する狩人の対比は王道中の王道であり(※絶賛であるので念のため)、共通項でもある。
さておき、邪悪な化け物にどう立ち向かうかが本作最大の醍醐味の一つである。それは作者が自家薬籠とする独自の世界観を無理なく展開する土台となる一方、職人芸としての魔物狩りの技術を呈示しておりワクワクさせられる。卑俗な言い方で恐縮ながら、クールビューティーな彼女が立場の弱い人間には優しいのにも共感を覚える。
もう一つ、妖精のプークと申さばケルト神話のそれを思い出す。作品の発端と終焉にかかわる存在であり、仮に本作が活字本になったら頁と頁の間に潜んでいそうだ。
なんにせよ、是非とも続きを読みたい。
必読本作。
王道ファンタジーを描く……。これがいかに困難な事であるか、経験者は骨身に染みて解っている事だろう。今回読者諸兄に紹介させて頂くのは、この難題を見事に克服した作品である。
この作品にはどぎつい暴力・残虐・性描写が見られない。独特の癖や無駄な修飾もなく、滑らかで丁寧な万人受けする文体である。
又、「!」や「――」等の約物の使い方もこなれていて、文章の流れに変化を加えている事が判るはずだ。
しかし舌(目)の肥えた読者諸兄ならば、入念な原材料の選定に似た言葉選びと、丹念な発酵過程を思わせる字配りに心底唸らされるだろう。
加えて、ドラマやアニメを彷彿とさせるエピソード分割も作品の没入度を高めるのに一役買っており、ライトな読者層にも味わって貰いたいとの作者の配慮が伝わってくる。
ケルト神話をベースとした設定は壮大であり、市井の人々の細かい描写と相まって、「実在した歴史」と錯覚してしまう程だ。飲(読)み口がマイルドな分、その熟成された世界観には驚きを禁じ得ない。
因みに、作中に登場するモンスターの名前が記憶にない場合は一度調べてみることをお勧めする。作者の茶目っ気に出会えるかも知れない。
北国の厳然たる風土で紡がれる少年と「師」の成長の物語は、まさに穏やかで力強いグレーンウヰスキーを想起させる。
読者諸兄も良質な本格王道ファンタジー作品を味わって頂きたい。
吟遊詩人の詩と調べに思いを馳せながら、乾杯――
読み始めたときにまず驚愕してしまいました。
圧倒的文章力、というのはこういうことか、と。
実を言うと知らない単語が多く、調べつつ読ませていただきました。
なので、とても勉強になりました。
そして作者様はどこでボキャブラリーを身に着けられたのかと興味がわきました。
おそらく浴びるように良い作品をインプットし続けているからだと推測しています。膨大な知識量から生まれたのが本作なのだと思うと納得です。
「作品」としての完成度がずば抜けています。
グッとくるシーンもあり、遊び心を感じさせるところもあり、とても器用に表現されています。
ウルカさんにトキメキました。素敵っ!
他の方も仰られていますが、「☆10」レベルの作品だと思います。
読み応えのある作品を求めている方にオススメです!