異世界の空気を感じる言葉

本作の第一節は、作品世界に生きる魔獣の説明から始まります。「物語」を早く読みたいと願う読者にとってなんとも肩透かし。しかし、古い博物学を思わせる描写は実に詩的で、短いにも関わらず魔獣の実在を感じるようになります。

私たちが生きている世界とは違う世界で、生きている者が居る。その実在を感じさせるには、描写を誠実に積み重ねる必要があることを、作者は肌で分かっているのです。

描かれた世界は重くて、厳しい。戦士になれば覚悟は負わなければいけない。その重い物語を読み進めるうちに読者は思うのです。こんなこと、自分の日常には無かったな、と。

異なる世界を旅する、物語の醍醐味を存分に味わわせてくれる作品です。

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