それぞれの事情を抱え人々は今日もその小屋を訪れる。

森の奥深くに建てられた一件の小屋。本作はそこで暮らす一人の男と、そこへ迷い込んでしまった客人との交流を描く短編ホラー。

どんな客が来ても動じずに淡々と紅茶を淹れる主人と、いかにもわけありな来客との会話が、独特の雰囲気もあって読ませるのだが、本作はそれだけではなく物語の構成にも一工夫がある。

本作で小屋を次々訪れる客人は実は他の客人たちと関係があり、それぞれの会話を通して最初はよくわからなかった会話の意味や客人が抱えている秘密の正体が徐々に明かされていき、最後に毎回現れる顔馴染みの男が全ての真実を教えてくれるというのが面白い。真実を知った後に改めて客人たちの発言を読み直すと当初の印象とは全く別の物語が浮かび上がってくるのが非常に印象的だ。

一話一話も短くまとまっており、ちょっとした隙間時間に読んでみるとそのまま心にするりと入り込んでくるような作品だ。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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