金木犀の香る公園で、君はまた笑う

フリーライターにかつての恋人から届く。

『私が死ぬまでを書いてほしいの』

と言う手紙。

文字通り、彼女の願いを叶えるべく、共に過ごして話を聞いていく中で、かつては知り得なかった性質を知り、かつて通りだった彼女の良さをまた思い出していく。
それが楽しくて、嬉しくて、切なくて、怖くて……でも縋らないで、きれいにきれいに過去を新しくしていく。刹那を永久保存版に変えていく。

ブラッシュアップし尽された滑らかな文章は、一切のストレスを与えることなく読者の脳に流れ込んでいく。
本当に1万文字の中の出来事なのかと言うほど濃厚でいて、本当に1万文字もあったのかと言うほどあっさり読める。
そして読後には、得も言われぬ感情と感動が残る。
多分これは切なさ。どうしようもなく愛おしい切なさ。
最後に私はこう思った。

切なさを、ありがとう。

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