第八十八話 繋ぐ未来

私たちは混沌とした嵐の中で目を瞑り続けた。

なぎ様は私をずっと守り続けてくれた。

どのくらいの時が経ったのかは分からないけれど、やがて風がぐ。


おう、もう大丈夫だよ。」


凪様の胸にあてた耳から心臓の音が鼓膜に伝わる。


「私たちは生きているのですね。」


「そうだよ。俺たちは生き抜いたんだ。」


私は安堵と疲労の狭間にいるような不思議な感覚の中で、自然と涙が流れた。

長い戦いの後の安らかな静寂とともに、遥か地平線の彼方から朝陽が顔を覗かせる。新しい始まりの光が大地を染めていく。


「太陽が昇っていく・・。」


私たちは眩い光を見つめた。

太陽の光が焼け爛れた大地を癒すように一面へ広がっていく。




「桜ちゃん!凪!二人とも無事で良かった!」


すばる様が駆け寄って私たちを抱き寄せ、白丸様と黒丸様もお互いの無事を喜んだ。


「さっき、白虎から飛び降りた時はどうなるかと本気で心配したよ!」


「ふふ、でも私は昴様との約束を守りましたよ。生きて戻ってきました。」


「ふふ、そうだね。よくがんばったね。」


昴様が私の手を取り優しく微笑んだ後に、すぐに真顔になった。


「でも、もうあんな危ないことしたらダメだよ!桜ちゃんを失うなんて考えられないんだからね!!」


「え?あっ!ちょっと・・、昴様!」


昴様が私を引き寄せてぎゅうぎゅうと強く抱きしめる。

いつもの光景、いつもの腕の中、すでに日常が戻りつつあることを実感する。

白丸様と黒丸様が呆れた様子で顔を見合わせ、額に手を置いた。


「あー・・、また伯父上のいつものが始まりましたね・・・。」


「せっかくのいいところなのに、最後くらい若様に譲ってもいいじゃないですか!ね?若様?」


凪様が私たちを見ながら優しく苦笑する。


「俺はもう慣れたから大丈夫だよ。」



天からキラキラときらめく雨粒が降ってくる。

雲一つない青空から降り落ちる不思議な雨は大地に潤いを与え、干上がった湖に恵みの雨を注いでいく。

天照大御神あまてらすおおみかみ様が清らかに語りかける。


『素晴らしき魂たちよ、強き意志の力によってわざわいを討ち果たし、自分たちの未来を切り開きました。さあ、この三つの宝を授けましょう。』


天から一筋の光が凪様に注がれると、その左腕に埋め込まれた刃が体から分離を始め、一つの神剣・天叢雲剣あまのむらくものつるぎとなって現れた。

双子の白丸様と黒丸様の手には片割れ同士の八咫鏡やたのかがみが舞い降りる。

そして、私と昴様の手元に五色の勾玉飾りが与えられた。


雨は優しく降り続け、遠くの空に虹が架かる。

虹の橋の間を生命に溢れた青い鳥たちが悠々と飛んでいく。

神々しい太陽の光がゆっくりと大地を染めて、新しい世界の始まりを告げた。



「私はこれからも皆様と一緒に生きる。未来へ向かって———」




『陰陽師☆生命の桜』——完結——



□■あとがき■□


ここまで貴重なお時間を頂戴し、お読みくださいまして誠にありがとうございました。至らない点もあったかと思いますが、温かく見守っていただき、書くことの励みになりました。

すべての方へ心から感謝申し上げます。

ぽよん

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陰陽師☆生命の桜 ぽよん @bamyom

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