第八十七話 陰陽<後編>

二人の意志に呼応するかのように、黄竜こうりゅうが雷鳴の如き鋭い雄叫びをあげる。

それと同時に天空の五芒星ごぼうせいが光の柱を地上に突き立てて、大地の魔方陣が輝きを一層強くした。

神龍が躯体を反転させ、オロチの心臓を目掛けて一直線に急降下。

眼前に目まぐるしくオロチの巨体が迫り、なぎが鬼神の核となる心臓に照準を合わせる。


おうは恐れることなく両目をしっかりと開け続けた。


「私たちはこの禍を討ち果たす!!!!!」


大きな衝撃音が轟き、黄竜の鋭い牙がオロチの鋼鉄の皮膚を食いちぎると、ドクリドクリと脈打つ赤黒い心臓があらわになった。

凪が思い切り剣を振り上げ、気合の叫びと共に渾身の一撃をオロチの心臓にぶち込む。

桜の左胸から溢れ出る黄竜の霊気が凪の剣を伝わって、次々とオロチの心臓へ大量に送り込まれる。

神龍の光を纏った天叢雲剣あまのむらくものつるぎが、その核心をどこまでも深くえぐる。

二人が互いの力を合わせ鬼神の禍をぎ払った。



「阿阿阿阿阿阿阿阿アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


鬼神オロチが断末魔の雄叫びを絶叫し、ついに絶命する。

しかし、次の瞬間、オロチの体が内側から膨張を始めたかと思うと、一気に亀裂が入り、その裂け目から赤い光線が放射された。


「オロチが崩壊する!!!!!!!!」


オロチの亡骸は異様なほど膨張すると、巨大な核爆発を起こそうとする。

凪は桜を引き寄せてしっかりと抱え直した。


「ここから離脱する!!行くぞ!!!」


「はい!!!」


黄竜と一体となった二人は躯体を翻し、逃れるように滑翔を開始する。

すばると双子も爆発から脱出するべく、白虎と青龍の背に乗って激走していく。


「爆発の後に衝撃波が来る!!!できるだけ遠くへ!!!」


オロチの巨体は不気味に膨張し続け、ついにはち切れんばかりに膨らんだ。

鬼神の内側からおびただしい赤い光線が放射する。

五人と式神たちは走り続ける。


「来るぞ!!!!」


辺りが赤い光で一杯になると、続いて低く唸るような音が響き出す。

次の瞬間、一気に爆発音が轟いた。

強烈な光が視界を瞬時に奪っていく。

凄まじい衝撃波がすべてを吹き飛ばしていく。

黄竜が光の防御壁と姿を変え、桜と凪が放り出される。

衝撃波が防御壁にぶつかると轟音が響き、音圧だけで体が倒れそうになる。

転びそうになる桜を凪が力強く支えた。


「桜!!大丈夫か!?」


「大丈夫です!!!」


桜が力強く頷き、凪がその手をしっかりと握り直すと、再び二人が走り出した。

しかし、爆発の衝撃があまりにも強すぎて、すべてを防ぎ切ることができない。

防御壁に数カ所の亀裂が入り、凄まじい力が貫通していく。


「玄武!!!朱雀!!!」


昴が叫ぶと玄武と朱雀の二神が雄叫びをあげた。

玄武が水竜巻の壁を巻き起こし、朱雀が両翼を羽ばたかせて強力な風圧で衝撃波を押し返す。

五人が懸命に激走を続け、爆心地から逃れようとする。

それでも、防ぎ切れなかった衝撃波が襲い迫り、防御壁を破った余波に五人が吹き飛ばされた。

凪が桜を庇うように抱え、風圧に押し飛ばされながら大地に叩きつけられる。

昴と双子も転がるように地に伏せ、白虎と青龍が盾になり、迫る爆発の余波から全員を守る。

しばらくの間、体を叩きつける猛烈な風が吹き荒れ、飛び散った岩の破片が大地に落下した。

凪は桜を守り続けた。



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