そりゃあ「掛ける言葉が見つからない」わけだよ

端的に云えば、"私"のもとへ以前撃ち殺したイノシシが恩返しにくるというお話。

かつて殺したイノシシから、理由はどうあれ殺してくれてありがとうと感謝されるのは、"私"の立場から考えるに何やらバツが悪い。このときイノシシは人の姿に化けているのだが、"私"の仕掛けた罠にかかった傷痕(そして恐らくは銃創も)が残っているのも"私"からすればバツが悪い。ちなみにイノシシの訪問時、"私"が食おうとしていたのは所謂ぼたん鍋(イノシシ肉の出どころは云うまでもない)だった。もはやトリプルでバツが悪い。

イノシシは何故自分を殺した"私"のもとへ恩返しにやって来たのか? この短編は最後の最後で読者にこんな教訓を与えてくれる。

「いろいろ、大変だったんだな」という魔法の言葉で、私たちは大体身を護れる。