本作の素晴らしいところは、ギャグと人情味あふれる物語が、共存しているところにあります。
ウィットに富んだ笑いが続くと思えば、急に人間味あふれる温かいシーンに繋がる。
その意外性が魅力の一つです。
さらに、テンポがある物語に、歯切れの良い文脈は、読む人を選びません。誰でも楽しめます。
ただし、序盤はパロディに頼りすぎる風潮があります。元ネタを知らない読者や、その手のネタに飽きている人には、受け入れられないかもしれません。
本作はパロディに頼らずとも、十分笑える面白さ、物語に惹きつけられる意外性が畳みかけられています。
ちょっとした読み物に最適です。
タイトルの通りである。
……とレビューを終えてもいいのだが、さすがにこれでは作品、そして作者に対して失礼だろう。もう少しだけ、内容について触れておきたい。
この作品は徹頭徹尾「コメディ」である。
「コメディ」と聞いて侮ることなかれ。
素人のギャグほど見るに堪えないものはないのは、ご存じの通りだ。
「え、これ面白いと思ってんの?」
「うーわ、また下ネタ……」
「寒っ……親父ギャグかよ」
ネットでコメディを書く際、書き手は常に読者の心無い反応を妄想し、内心びくびくしながら投稿するものである(少なくとも私はそうである)。
しかしこの作品はどうだ。
そんなみみっちい私の心配をあざ笑うかのようではないか。
ぶっ飛んだキャラクターに、切れ味鋭いセリフ回し、絶妙な伏線回収。
一話一話にこれでもかとばかりに詰め込まれた工夫の数々に、ページをめくる手が止まらない。
そして読み終わった時鏡を見てみるがいい。読者諸君は「にやにや」と気味の悪い笑みを浮かべていることだろう。
もはや感嘆を越えて呆れかえるばかりだ。こんなに面白い「コメディ」を描ける人間はセンスの塊か、もしくは脳内がお花畑であるに違いない(悪口じゃないよ!)
このような作品を発見でき、そして今後も読むことができることを、うれしく思う。