最終話 地球への帰還

――剣の魔王バッシュが討ち取られてから約一か月後、帝国には各国の国王や臣下が集まり、勇者を元の世界へ送り返すための儀式の準備が行われていた。



「遂にレアさんも帰っちゃうんですね、何だか寂しくなりますね」

「うん……でも、リリスは一緒に行かないの?」

「そこは迷いましたけどね、まあこっちの世界にも色々と未練があるのでしばらくの間は残らせてもらいますよ」

「レア君、これが永遠の別れではない事は知っているが……だが、達者でな」

「寂しくなる。チイもそう思う?」

「わ、私は別に……」

「チイ殿、こういう時は素直になるでござるよ」

「びええええんっ!!」

「そんな号泣する程に悲しいのでござるか!?」



見送りの際にはレアはこれまで一番長い付き合いのリル、チイ、ネコミンと握手を行い、別れを惜しまれる。ハンゾウやリリスとも別れを告げると、彼の元にクロミンとアカを連れたサンが近寄ってきた。



「きゅろ……レア、また何処かへ行くの?サン達も一緒に行きたい!!」

「大丈夫だよ、何かあればいつでも呼び出せるからね。それに皆を連れて行くと色々と大変な事になりそうだから……」

「ぷるるんっ(寂しい)」

「シャアアッ(←服に噛みついて行かせないようにする)」



地球に戻るために必要な転移石はレアの能力で既に複製を作り出しており、いざという時はもう一度儀式を行ってレア達を召喚する事は可能なはずだった。レアを含めて他の勇者達も元の世界の家族や友達に会いたく、誰も無理に止める事は出来ない。


最もリリスによるとあちらの世界に勇者達を送り返しても召喚の儀式を発動すればまた戻せるらしく、しかも時間も調整できるという。こちらの世界にどれだけの時を過ごそうとレア達は元の世界へ戻る時は召喚の直後の時間帯に送り返す事が出来るという。



「よし、これで問題なく発動できるはずです。送り先と時間帯の調整は終わりました」

「本当にそんな事まで出来るのか?すげぇな、おい……」

「これで地球に帰れるんだね〜皆に会えるんだ!!」

「ああ、そうだね……でも、僕達はここへ長く過ごしすぎた。帰ったらしばらくは勉強三昧だろう」

「うっ……やっぱりそうなるよね」



この世界に訪れてからはレア達は色々とあって勉強など一切しなかった。1年以上のブランクもあるため、当分は勉強三昧の日々を送るだろう。


ちなみに肉体の年齢に関してはレアの能力で既に1年前の状態に戻っており、肉体が成長している事は気づかれる恐れはない。服装に関しても学校の制服に着替えており、この制服だけは処分せずに保管していた。



「まさかこの制服をまた着る機会が来るなんてね……とっくの昔に捨てられていたと思ったよ」

「異世界の素材で作り出された貴重な服ですので処分するなど有り得ません。ましてや勇者様の服ならば何か特別な力が宿っている可能性もありますし……」

「アリシアさんにも色々と世話になったね、ありがとう」

「いえ……お気になさらないでください。レア様や他の御三方がいなければこの帝国も既に滅びていたでしょう」

「感謝するぞ、勇者殿」

「貴方達の偉業は伝承として残します。どうか、お元気で……」



最後にレアは各国の国王と話し合い、特にアリシアはレアが帰還する事に本音を言えば残ってほしいと思うが、事前にリリスから勇者は呼び出されるという話を聞いていたので無理に引き留める事はしない。


別れの時間が迫り、この時にリルはチイとネコミンに振り返り、頷き合う。この際に3人はレアに対して秘めていた思いを告げる事にした。



「レア君、こんな時にいうの物なんだが……私は君の事が好きだよ」

「えっ?」

「じゃあ、私は大好き」

「ええっ!?」

「私もお前の事を……あ、愛して……愛してる……言えるか!!」

「いや、もうそれ言っているでござる!!」



最後の最後で愛の告白を告げてきた三人にレアは戸惑うが、彼が返事をする前にリリスが転移魔法陣を作動させ、準備が整った事を告げる。



「ほらほら、最後の最後でラブコメ感を出している場合じゃないですよ!!転移魔法陣を発動させます、早く魔法陣に移動して下さい!!」

「えっ!?ちょっと待って、3人とも本気で言ってるの!?」

「当然じゃないか、僕達は全員が君の事に夢中さ」

「リルの場合はレイナの方が気になっている気がするけど……」

「いいか、帰ってくるときまでに返事は考えておけ!!」

「待ってください、それならば私もレア様をお慕いしています!!」

「アリシア殿!?急に何を言っているのでござる!?」

「ならサンもレアが大好き!!クロミンも同じくらい好き!!」

「ぷるぷるっ(照れるぜ)」

「じゃあ、私も〜」

「ヒナさんも!?」



転移が発動する直前だというのに女性陣が騒ぎ出し、そんな彼女達にレアは戸惑うが、シゲルが彼の腕を引く。



「ほら、行くぞ!!転移が発動しちまうぞ!!」

「ちょちょ、待ってよ!!これ、どういう状況!?」

「霧崎君……一言だけ言わせてくれ。羨ましいよ、君が」

「じゃあ、皆!!またね〜!!」



レア達は転移魔法陣に乗り込むと、最後に全員に別れの挨拶を行い、魔法陣が光り輝く。そして彼等は光の柱に飲み込まれ、この世界から消えた――





――こうして世界を救った勇者達は地球へと帰還したが、リリスは事前に伝えていた通りに勇者達を定期的に召喚し、こちらの世界へと呼び寄せていた。勇者達は世界を救った後も異世界へ旅行感覚で帰還し、平和で楽しい日々を過ごしたという。







※一先ずはこれで最終回とさせていただきます。もしかしたら外伝を描く機会があるかも……

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解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き残ります カタナヅキ @katanazuki

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