あなたの制服、私の制服

静かな中に強さを感じる純文学作品。
主人公の置かれた状況は詳しく描かれていないが、だからこそ摩耗した心が伝わってくる。余計な心情吐露がないだけに、文章から伝わる雨の音に、閉ざされた雨戸に、ネジやフェンスの錆に、空っぽの布団に、読者は様々な感情を読み取り、ともに心を動かす。
過去の日に、自転車に乗って通り過ぎる学生たちに何を見たのか。そして今、自転車に乗ってどこへ行くのか。
ラスト、主人公の「意思」に胸が熱くなりました。