柔らかな読了感と共に、“家”を今一度考えなおすきっかけとなる一作

家という言葉には二つの意味合いがある。一つは建築。
そしてもう一つが、本作に巧みに描かれる、単なる三次元空間としてではなく、様々な時の流れを思わせる四次元空間とも呼べる存在である。

物理的な意味で家は、引越し・建て直しなどによって、時代を超えることがある。だが、その思念が継承されることは、どの時代・国・身分の「家」であっても、容易ではない。

そういった中で、まさに奇跡的な邂逅を果たした主人公は、写真を介して想いに寄り添う。
「座敷」へお通しされる者はすべからく家に親しい者である。
ただ想いを馳せるのではなく、この寄り添う姿勢こそが、大人になり巣立とうとも、新たなる「家」へと継承するに至るのだろう。
柔らかな読了感に包み込まれる。