妖怪的小虫・メマトイのお目当ては?

 やや人気の少ない藪や林に近づくと、目のまわりをプンプンと小虫が付きまとう。

 ああ、まただ。ヤツが来た。


 一体何が目的なのだろう。執拗に頭付近ばかりを狙ってくるので不気味である。蚊のように腕や足に止まって血を吸うでもない。



 この虫の名前や情報については聞いたことがない。虫の目的は不明。ただただ付きまとってくる恐怖感。


 それらから逃れようと私は走り出した。



 5メートルほど走った後、激しい息切れにより立ち止まる。

 すると……


 いるいる。まだアイツが付いて来ている。ヒーッ。





 ……今目の前をチョロチョロしているクロバネキノコバエかユスリカかチョウバエを見ながら、そんなことを思い出していた。



 あの目のまわりをウロチョロしてくる小虫は何者か。

 以前検索してみた結果によるとその正体は「メマトイ」らしい。

 「妖怪かよ」とツッコみたくなるネーミングである。



 さらに調べてみるとどうも、メマトイのお目当ては人間の涙を吸うことらしい。ますます妖怪臭い。


 目に寄ってくるのは大抵オスのメマトイなのだそう。その理由についてはよく分かっていないみたい。

 視覚で動物の目を感知して来る虫らしく、カメラのレンズにも寄ってくることがあるのだとか。



 このメマトイの行動自体に特に害はないようだ。刺したり噛んだりする蚊やムカデに比べて、涙を吸うだけなんてなんだか可愛らしい。その程度だったら差し上げてもいい気がしてくる。


 しかしもう少し読んでみると、なんとメマトイの中には東洋眼虫という寄生虫を媒介する種がいるそうだ。

 東洋眼虫は読んで字のごとく動物の目に潜り込む寄生虫らしく、ヒト・イヌ・タヌキ・キツネ・ネコ・オオカミ・ウサギなどが感染するという。



 うーん、メマトイだけなら可愛いかもしれないけれど、目に潜る虫のプレゼントは勘弁……。

 ただでさえ目が悪いので食われるわけにはいかない。目を食うのかどうか、生態はよく知らないけど。



 それにしても、あの目に寄ってくる小さい虫にそんな危険があったとは。山や森っぽい場所あるあるだと思うけれど、ネットで検索するまでメマトイや東洋眼虫について聞いたこともなかった。世の中知らないことだらけだ。


 やっぱり、メマトイに絡まれたらダッシュで逃げるという対処法は合っていたのだろう。あと、ネットの情報によるとメマトイ対策にはハッカスプレーが良いということだ。



 そんな日本のメマトイたちの中で東洋眼虫を媒介する種は、オオマダラメマトイ・マダラメマトイ・カッパメマトイなどらしい。


 カッパ……?



 カッパの由来が何かは分からないけど、やっぱりそこはかとなく妖怪っぽさを漂わせるメマトイたちだった。





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