可愛いハエトリグモ

 家にはたくさんのハエトリグモがいる。

 種類はチャスジハエトリが多く、その次にミスジハエトリ、シラヒゲハエトリ、たまにヨダンハエトリが見られるというところだろうか。今日はあまり見たことのない名前が分からないハエトリグモもいた。


 ハエトリグモの見分け方や種類を覚え始めたのは最近である。メスの見分けにはまだ自信がない。



 さて、そんなハエトリグモ、ちょこまかと走り回る様子がとっても可愛い。

 近づいたら目を合わせてきたりしてさらに可愛い。


 ハエトリグモはネット上でも人気が高く、「ハエトリグモハンドブック」という本がハエトリグモ好きの間で重宝されているらしい。なので時々本屋で探しているが、マニアックなためか見つからない。



 さて、そんなある日、私はネット上の誹謗中傷や嫌なページを見てしまい落ち込んでいた。すると部屋の中をうろつくハエトリグモが目に止まった。


 気分転換に観察しようと思って近づくと、ハエトリグモはこちらを見上げてきた。ハエトリグモがよく見せてくれる仕草だ。(背中を向けて逃げる場合もある。)


 その子は逃げるでもなく警戒している風でもなく、じっと見つめてくる。なのでこちらもボーッと見つめ返した。

 その間おそらく30秒ほど。



 そうしてクモを眺めていると……

 なんだか癒された。



 綺麗な目をしている。

 体長は1cmにも満たないほどの小さなクモだが、宝石のようにキラキラと輝く大きな黒い目が4つほど並んでいる。

 そして、わずかに首をかしげたりしつつこちらを見つめている。



 ハンターではあるが、その純真な眼差しからは悪意というものが感じられない。

 なんだか、星空を眺めているような気分になった。



 その後、邪魔してしまって悪かったかと思いクモから離れたが、その子はずっとまわりをウロチョロしていた。

 しばらくするとこちらへ向かってきて私の足に登りはじめ、とても可愛かったけれど、踏み潰してしまいそうで怖いので外へ逃がした。



 そんなわけでハエトリグモは可愛らしく、眺めることで癒し効果がある。

 嫌なことがあっても、ハエトリグモを見ると和らぐのだ。間違いない。



 しかもハエトリグモは遠い国にいるのではなく家の中でしょっちゅう会えるのだから、ありがたいことこの上なしだ。……ここまで出現率が高いと踏みそうで怖いけれど。



 ハエトリグモはハンターだが、よく見ると結構失敗しているように見える。


 天井から糸を使って下りてきたものの、着地しようとした場所がツルツルで何度も足をすべらせていたり。ジャンプしようとしたものの、目標を見誤ったのか足をすべらせて落ちたり。ダンゴムシをつかまえようとして飛びかかったものの、丸くなって防御されていたり。そんなところも愛嬌があるのだ。


 動画サイトにもハエトリグモの可愛らしい行動を収めた動画がたくさんあり、うっかり見始めてしまうと止まらない。特にマウスポインタを追いかけるクモの姿が人気らしい。



 私はハエトリグモの動きによく意外性を感じる。

「あれっ、虫って普通こんなことする……のか? いや、でも実際やっているしなぁ……。」という感じだ。


 ハエトリグモの知性についてはそんなに盛んに論じられていないようだけれど、実はすごく頭がいいんじゃないかと思えてならない。そのうち研究されてすごい事実が判明するかもしれない。



 そんなハエトリグモ、さっきから私は虫、虫と呼んでいるが正確には昆虫ではない。ムカデやサソリも昆虫ではない。しかし昆虫だろうと昆虫でなかろうと観察してみると必ず発見がある。ぼんやり眺めていれば虫のイメージが覆ること間違いなしだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る