2 白き夢物語

只々、白い

 白い。今、白い部屋に居る。いや、部屋と呼ぶには広いか、ただ、なんとなく見覚えのある部屋だ。中央には円を描く様に白い本棚がいくつかある。その周りには白い床が広がり、透明の水が水路を流れる。水は壁から流れる。それより内側は壁。出入り口と思われるのが一つあり、それに応じて水路にも橋が架かる。


 コツ、コツ、コツと本棚の方から音が聞こえる。音のする方を向く。整った黒いスーツを着て、如何にも紳士という様な見た目をした白髪まじりのおじさんが一冊の本を持って歩いてくる。

「やぁ、心君……朝ぶり、だろうかね……なんせここは太陽も廻らなければ月も廻らない。只、白い光があるだけだからね。そっちの時間というものが分からないんだ」

――朝……今日の朝だ。今日の朝見た夢だ。その夢でここに来たんだ。それにしても――……

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心のパレット 野田 琳仁 @milk4192

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