第4話、表現力・・ 以前の問題?

 百聞は、一見に如かず。

 とりあえず、レビューや、★の多い作品を選び、読んでみました。


「 ・・・・・ 」


 ナンだ、こりゃ?


 えーと・・・

 私も、アマチュアです。 地方紙や専門誌に記事を載せた事や、地域新聞社からコラムの依頼を請け、過去には書いた事もありますが、間違いなくアマチュアです。 従ってエラそうなコメントは、実際のところ、控えたいとは思うのですが・・

 コレは、あまりに酷い・・・!


 情景描写どころか、状況描写すら無い。 意味不明な空白改行の果てには、会話文のみの羅列が存在する・・・

 果たして、これの、どこが『 小説 』なのでしょうか・・・?

 趣味で創作を始める際、勉強のつもりで読んだ純文学とは、ほど遠い『 シロモノ 』です。

「 ライトノベルなんだから、こんなカンジなんだよ! 」

 そんな声も聞こえて来そうですが、勝手な主張は、ヤメて頂きたいものです。 そんな定義を、正義宜しく振りかざすのであれば、今すぐ、創作を止めて下さい。 ライトノベルも、れっきとした文学のカテゴリです。 文学を、あまりにナメています。


 小難しい単語を陳列している作品も多々、ありました。 ある程度、理解をされ、列挙されておらるのだとは思いますが、この際、言わせて頂きたいと存じます。


 読めない語句を使うな。

 書けない漢字を使うな。

 普段、使わない表現を記述するな。


 です。

 PCの変換から出て来た『 モノ 』を、そのまま、あたかも自身の知識として『 転写』しているように思えてなりません・・・

 上記の表現を例題とすると、『 あたかも 』→『 恰も 』です。 普段、そんな漢字を使って文章を書きますか?

 僅か( わずか )とか、翻す( ひるがえす )とか・・ そんなん、平仮名でいいじゃないですか。 ・・おおっと! 使ってしまいましたね。 『 ひらがな 』。

 小難しい漢字を多用する事が『 カッコいい 』と思っているのなら、それは大きな勘違いです。

 作品の雰囲気により、意図的に難しい漢字を使用するのは、ある意味での演出であり、創作手法の一つとも考えられますが、あまりに多用し過ぎているのと、慣習化している現状が見て取れます。


 創作は、見た目ではありません。 表現を、ヒトに訴える・・ 言うなれば、『 芸術 』なのです。

 芸術である以上、訴える『 何か 』が必須。 それが『 テーマ 』だと、私は考えます。 テーマが必要だとコメントさせて頂いた訳は、ここにあります。 例え、コメディー作品であっても、テーマは必要だと思いますよ?


 芸術に、小難しい解釈は、必要ありません。 訴えるべきテーマを、簡単に・確実に読者に伝える『 手段 』こそが必要なのです。

 文章創作においての、その手段とは・・・


『 情景描写 』・『 状況描写 』・『 心理描写 』


 この3つでしょう。

 これにあと、適度なボリュームの会話文があれば、小説は、誰にだって書けます。

 ・・まあ、大衆に支持される小説は、テーマ・着眼点の他に、平均水準以上の文章力も求められますから、このレクチャーの限りではありませんけどね・・・


 ちなみに、会話文は、あくまでも会話『 文 』であって、『 描写 』ではありません。

 会話文は、上記した3つの描写の『 飾り 』です。 文学的には、状況描写の一部とされ、古い名作小説などを読むと、単独改行すらされずに、そのまま状況描写の一部として書かれてあります。 つまりは、それだけ重要視されていなかった、と言う事です。

 ・・まあ、古い小説文体を模倣する必要はありませんが、参考にはして頂きたいと思う次第です。


 異世界モノ・ファンタジーを創作されている方、全てに、ここまで記した状況であるとは当然、申しません。 しかし、発表されている創作の、ほとんどがそれに準じている状態である、と思えてならないのです。 とにかく、情景描写が圧倒的に不足している現状に加え、あまりに状況描写を軽んじている風潮が気になるのです。


 例えば・・・


 西の空が赤く染まり、太陽が沈んで行く。

 城の城壁には、幾つもの搭が建っていた。

 搭の頂上に立つポールに、旗が掲げてある。 それを見て、俺は言った。

「 あの旗には、見覚えがあるぞ? 」

 一緒にいた男が、言った。

「 あれは、先の皇帝の息子、ルイス・ノエル侯爵の御旗ですね 」

「 ルイス卿の・・・ 」


 テキトーに、陳腐な文章を書いてみましたが、この文章には、状況描写がほとんど無い事にお気付きでしょうか?

 『 俺 』の他に、男がいる・・ ただ、それだけが、文章から得られた『 状況 』です。 あとは、簡単極まりない情景描写のみ。

 これを、時系列も少し変え、書き直してみます。


「 あの旗には、見覚えがあるぞ? 」

 茜色に染まった西空に沈み行く、真っ赤な夕日・・・

 その夕空を背に、薄黒く、影絵のように映る城壁の上には、幾つもの搭が建っていた。 その搭の頂上にあるポールに掲げてある旗を見て、俺は、誰とも無く、呟いていた。


「 あれは、先の皇帝の息子、ルイス・ノエル侯爵の御旗ですね 」


 ふいに、後ろから聞こえた声。

 振り向くと、じっと、旗を見つめる若い男の、静かなる瞳があった。

 男は無言のまま、吹き至る風に亜麻色の髪をなびかせ、ゆっくりと俺の横に進み出た。 風になびく旗を、感慨深げに見つめ続ける。


 ・・・見つめる瞳に映るは、旗では無く、遥かなる過去の記憶か・・・


 旗に視線を戻し、俺は言った。

「 ルイス卿の・・・ 」


 ぬううぅ・・! エラソーな事をコキましたが、見事なる駄文で申し訳ありません・・・!

 物語の設定も無い為、テキトーに書いているので、状況描写に信憑性が欠けてしまい、書いていても、イマイチ掴み所が無い、素人っぽい文章になってしまっています。 男との因果関係もわかりませんし、風貌も不明です。 城には、長旅をして辿り着いたのか、ただ単に訪れただけなのか・・・

 ただ、状況描写を入れると、読み手全員が、ストーリー内の同じ『 場面 』に立てます。


『 男は、俺の後ろにいた 』

『 場面には、緩やかな風が吹いている。 寒くは、なさそうだ 』

『 男は、俺の横に進み出た 』

『 男は黒髪ではなく、亜麻色で、それなりの長さがある 』

 加えて、心理描写も1文、入れてみました。 読み手の推理・印象が入ります。

『 男には、何やら過去があるらしい 』


 状況描写は、時により、情景描写よりも正確に『 場面 』を伝えます。 しかも、読み手の、誰の脳裏にも、同じ場面を再現させます。

 状況描写の不足は、創作の良し悪しに、大変に大きく影響すると言っても過言ではないでしょう。

 ただ、情景描写・状況描写、共に、入れ過ぎると説明的な文章になってしまいます。 読んでいても面白くありません。 先程の駄文も、設定が無い為、文章に覇気が無く、これに近い印象となってしまいました・・・

 この辺りのボリュームは、個人的な差もある為、創作をする者の采配となります。 その辺が、いわゆる『 センス 』でしょう。


 とにかく、情景・状況の描写が無い文章は、会話文のみが先行し、読み手に、ストーリーが展開している『 景色 』を見させてくれません。 読み手と、書き手しか知り得ない、非常にコアな場面のみを想像するしか無いのです。

 それは、ある意味、暗黙の了解ですね。 確かに、間違いの無い『 景色 』かもしれませんが、それ以上は無く、決して建設的では無いでしょう。 『 分かっている 』景色からは、何も期待感は生まれないのです。


 さて、論破されたような屈辱感・嗜好を愚弄された怒りを抑え、ここまで冷静にお読み頂いた方には、次なる疑問が湧いて来るかと思います。

 

 異世界モノは、確かにファンタジーの一部。

 じゃあ、ファンタジーって、ナニ・・・?


 おそらく、今までに、一度は脳裏を過ぎった、純粋な疑問ではないでしょうか。

 そして今、まさに初めて想った方・・・ いや~、素晴らしいですね。 遂に、そこまで到達頂けましたか。

 次章、ファンタジーについても、参考ながら語らせて頂きます。

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