第3話、なぜ、長編なのか?

 異世界モノの創作物は、そのほとんどが長編です。 逆に言えば、短編の異世界モノは、お目に掛かった事がありません。


 ・・そう。

 作者の方たちで、悩んでいらっしゃる方も多いかと思いますが、『 終われない 』のです。


 何十章どころか、何百章にも亘る創作物をよく見かけます。 膨大な章の為、第1部・第2部と言った、編による構成にしている創作物も見かける事があります。

 1つの章の長さにもよりますが、それにしても、ほとんどの異世界モノは、長編となっている場合が多いかと。

 まあ、ご自身のお気に入りの世界に浸っているが為、『 終わりたくない 』と考えておられる方も多数、いらっしゃるかと思います。

「 バカ言っちゃ、いけないよ・・! 俺の作品が長いのは、最初からそう言う設定で進めているからさ。 ちゃんと、章ごとに、展開を進めているんだ 」

 そう言う方たちの『 行く末 』も、いずれ、同じ境地に達すると思われます・・・

 そもそも、何百話・何十章にも及ぶ物語のラストシーンは、一体どのような終焉が相応しいか考えてみて下さい。 読破した境地に値するラストは、壮大かつ荘厳なものか、涙腺がにじむくらいの感動が無ければ、当然にして不相応です。

 悲しいかな、未だかつて、そのようなラストには、お目に掛かった事がありません・・・


 なぜ、終われないのか・・・?


 この章のタイトルを言い換えれば、そうなりますね。

 でも、普通に考えれば「 なぜ終われないのだろう? 」と、不思議になります。 だって、ラストシーンは、一番書きたいシーンのはずです。 それが書けないなんて・・ 不思議以外の何物でもありません。

 これにも当然ながら、理由があります。


 物語に『 テーマ 』が無いからです。


 ただ単に、戦闘シーンが書きたい・・・

 主人公に、こんなシチュエーションで、こんなセリフを・・・

 こんなシーン、憧れるなぁ・・・


 これはテーマではなく、『 願望 』です。 その一念で始められた物語であるが故に、一番書きたいはずのラストシーンが、最初から存在していないのです。 もしくは、かなり希薄なテーマしか無い・・・


 異世界モノ=ファンタジー


 この図式も、かなり精度があるかと思いますが、『 異世界モノ 』の創作物が含まれるとされるファンタジーなるカテゴリの作品には、冒険活劇の要素が色濃く反映されています。

 つまりは、ストーリーが進んでいる事態こそに、読者は満足感を得るのであって、あえてテーマは存在させない作品が多いのです。 従って、ファンタジーの流れを汲む、異世界モノの創作にもテーマが無い作品が多く、ストーリーが停滞しない事のみが優先され、延々と物語が続いて行くのが現実の状況です。

 

 そして次に現れる『 悩み 』・・・

 これもまた、異世界モノ創作に携わる、ほとんどの方に覚えがあるかと。


『 飽きた・・・ 』


 出ました。

 無責任極まりない心情ですが、多くの方に経験がある事かと。

 快調に続けていた創作が、ある時点でピタッと止まります。 そして、ふと脳裏を、この感覚が過ぎるのです。 やがて、物語りが終われない事に気付き、一層、イヤになります・・・


 考えてみれば、あまりに自分勝手な心境ですよね。

 しかし、実は、これはプロの作家さんにも、よく見られます。 ただ、プロは、それなりの創作技術にてこの事態を回避し、あたかも、最初からそう言う設定だったように、見事に物語りを終わらせます。

 これは、テーマが無く、好き勝手書いているように見えても、プロは、それなりにプロットを脳裏に存在させている為です。 終わらせたくなったら、プロット操作を施し、違和感無くストーリー修正が出来るように、『 準備 』しながら創作しているからに他なりません。

 アマチュアの世界では、創作を始める準備段階・・ プロット制作の時間が、あまりに少なく、前後見境なく創作を始めてしまい、このような状況に陥ります。

 これも、テーマが無いが為に『 引き起こされた 』結果なのです。

 テーマがあれば、ラストシーンは、自ずと存在します。 話しの途中、停滞感があったとしても、とりあえず、ラストに向かって進んで行けるはずなのです。


 お気に入りシーンを、早く書きたい気持ちは良く理解出来ますが、やはり、創作に必要な最低限の努力は踏襲しておくべきでしょう。 せっかく、気負って書いた作品を、結果的に放棄してしまう結果にならないよう、慎重に進めたいものです。


 さて、プロットが粗方出来上がった後、いよいよ創作に入りますが、次に問題視するのは、その『 表現力 』です。

 これは、異世界モノに限らず、最近、ネット小説を『 牛耳っている 』ファンタジー作品のほとんどが、その対象になるでしょう。

 次章では、異世界モノの文章表現についてコメントさせて頂きます。

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