第5話、ファンタジーって、ナニ?
上記タイトルは、以前、専門学校で文章学・原作制作の講義をしていた時、よく生徒に聞かれた事です。
( あのね・・ そんなコトも分からずに、よく入学して来たね・・・? )
率直な感想でしたが、ファンタジー小説を書いているアマチュアの方の90%以上( って、ほとんどじゃん )の方が、ファンタジーの定義について語る事が出来ません。 まあ、実際には、そんな定義は確定されている訳ではありませんから、説明出来ない方が、非常に多い事実については、理解は出来ます。
・・が!
ナゼ、自分で調べんのじゃ!
PC開けば、Web上に、ナンボでも参考文献が載ってるだろうが!
自分が、好きで書いているカテゴリの『 正体 』も知らないなんて・・ そんじゃ、アンタの書いているモノは、一体何なの・・?
当時の私の、心の叫びです。
もう1つ、問いを増やしてみましょう。
SFって、ナニ?
「 スペース・ファンタジー! 」
自信満々に手を上げ、答えた生徒がいましたが、殴ってやろうか? と言う心情に駆られました。
30年くらい前に、スペース・ファンタジーと言うコンテンツを説いた外国の文学者がいましたが、基本的には、そんなカテゴリは認知されていません。 てか、訳が間違ってるし・・・
SFとファンタジーの違いが分からない方も、かなり多いのです。
訳を知っていれば、ファンタジーとの違いも、なんとなく理解出来ると思うのですが・・・
SFとは、サイエンス・フィクションの略です。
つまり、『 自然科学に則った、創作 』・・ と、なります。
太陽系に、太陽は1つ。 知的生命体は、太陽系では確認されていない為、『 宇宙人 』はいません。 ストーリー上、もし地球上にいるのであれば、それは太陽系( 今や、銀河系もか? )以外からやって来て、地球人になりすましている・・ と言う設定になるでしょう。 SF作品で、地球上に宇宙人を登場させるのなら、『 外宇宙から 』と言う設定しかありません。
映画なら、『 スター・ウォーズ 』ですね。
ただ、趣味・嗜好・・ あるいは『 独創的 』とも言える価値観において、「 スター・ウォーズなんて、SFじゃねえ! 単なる、ファンタジーだ 」と豪語する方もおられるようですが、趣味・嗜好で主張を通されては困ります。 私は、世界的視野・・ あるいは、一般的常識の観点に立って論じておりますので・・・
『 スペース・オペラ 』等も同じく、それぞれの線引きは、一般的には確立・認識されてはおりません。 個々の思考・嗜好・志向、あるいは独創的見解を、1つの意見として発表されるのは自由ですが、真実のように語られるのは、如何なものかと思う次第です。
私が、考えるに・・・
SF・ファンタジーの歴史は、共に、人類の想像力の始まりが起源とされるのではないか、と思うのです。
物語の展開・テーマ等に、空気・水・熱・電気・気圧等と言った、科学的要因が関与していれば、SF。 対して、神・精霊・怨念・念力・魔法等と言った、空想的要因があれば、ファンタジー・・ と言った具合です。
実際、8世紀の『 アラビアンナイト 』も、シェイクスピアが書いた『 テンペスト 』も、魔法によって事を成し得たのでは無く、魔法を使って『 科学的要因 』を駆使した結果、事を成し得ているので、「 SFとして読める 」と指摘する研究者の方もいらっしゃいます。 ダンテの『 神曲 』も、天国篇では、天動説に基づいた宇宙が展開されており、日本を例にとってみれば、『 古事記 』・『 竹取物語 』・『 浦島太郎 』も、月から『 人 』が来たり、時空・時間の観念が記述されていますので、大きなくくりの中では、SFになってしまいますかね・・・
主旨が、ズレてしまいました。 修正致しましょう。
本編では、明らかなる科学的要素を含む創作をSFと認知し、論評を続けさせて頂きます。
SF創作の場合、『 魔物 』も地球上には登場させる事は出来ません。 空想上のキャラですからね。
『 魔女 』も、地球上で確認された事はありませんので、NGです。 中世時代のヨーロッパでは、魔女の疑いを掛けられ、魔女裁判で命を絶たれた女性もいますが、魔女だったと言う証拠は一切ありません。 霊魂も同じ。
『 魔導師 』・『 精霊 』・『 魔法 』・『 霊能力 』etc…
皆さん、お馴染みの語句の列挙ですが、科学的に、その存在・効力を立証されていませんので、全てSFには登場出来ません。 ・・ただし、地球上以外ならOKなのです。
簡単に記す事になりますが、結果的には、SF以外の空想創作物語がファンタジー、となります。
アニメ『 魔女の宅急便 』は、魔女と人間が同居しています。 この設定からしてファンタジーであり、当然、地球以外の星での物語り、となります。
『 となりのトトロ 』は、明らかに日本の田舎を想定して制作されていますが、空想上の『 生き物 』たちが現れています。 偶然、日本の田舎に似た、違う星での物語り・・ と解釈しましょうか。 この辺り、ファンタジーの提議が確定されていない現状が露呈されている、良い例だと思います。
ちなみに、最近では、多少のファンタジー要素を含んだ作品であっても、日本純文学のカテゴリ等で出版される傾向にあります。
SFとファンタジーの違い、お分かり頂けたでしょうか?
線引きは、大変にグレーゾーンが広く、ファンタジーに関しては、ハッキリとした定義は存在しません。 ただ、SFには、歴然とした解釈がある以上、それを踏襲して創作をすべきです。
現在、カテ違いのSF創作物が、あまりに多く存在します。
それを指摘するサイト・出版社も無いが為、現状の混乱を増長しているような気がしてなりません・・・
「 ウンチクばがり並べやがって! 好きに書かせろ! オレは、ファンタジー命なんだよ! ファンタジー以外は、書かねえっ! 」
そんな抗議声明が聞こえて来そうですが、上記の発言は講師時代、毎日のように聞かされました。
まあ、ファンタジーが何たるか・・ は、この際、さておき・・ ソコまで言うのであれば、世界3大ファンタジーは当然、御存じでしょうね? 皆さんが大好きな『 異世界 』満載の、世界的に認知されている有名なファンタジー作品です。
検索すれば、すぐに分かります。 便利な世の中になりましたからね・・・
でも、今、ここで答えてみて下さい。
おそらく、皆さんが想像した作品のほとんどは間違いです。
「 ・・・・・ 」
いかがでしたか?
ファンタジーしか書かない、とか言うヒトに限って、1つも答えられないのが、学校の講義でも常でした。
まだ調べていない方の為に、正解と説明をさせて頂きます。
3作品とも、映画化されていますね。 タイトルを申し上げれば、誰でも知っています。
『 指輪物語 』・『 ナルニア国物語 』・『 ゲド戦記 』、です。
もっとも、キリスト教圏内での定義だ、と批評される方もいらっしゃいますが、一般的には、この3作品となっています。
作者名を、簡単に記しておきます。
『 指輪物語 』は、トールキン。 『 ナルニア国物語 』は、C・S ルイス。 『 ゲド戦記 』は、ル・グゥイン。
注目すべきは、実は3人とも、ファンタジー作家ではないと言う事です。
略歴も、簡単に記しておきましょう。
トールキンは、イギリス陸軍の通信士官で、中尉でした。 ルイスは、キリスト神学者。 グゥインだけは作家でしたが、女流のSF作家で、やはりファンタジー作家ではありません。 3人の内、唯一存命で、90歳近い高齢でしたが、2018年に惜しくも亡くなっています。
3人とも皆、それぞれに副業を持ち、会計士・宗教学者・学校教師など、色々な『 顔 』を持っていました。
つまりは、ファンタジー作家になるつもりではなかったのに、作品が売れ、作家になった・・ と言う事ですね。
これは、私たち創作をする者にとっては、羨ましい限りの経緯です。 逆に考えれば、私たちにもチャンスがある、と言う事になりますね。 これこそ、ファンタジーを創作する甲斐がある、と言うものです・・! 皆に、チャンスがあるのですよ? しかも、平等に・・!
更には、ファンタジーは、飽きられる事が少なく、その作品は長い間、読まれ続ける傾向にあります。 先記の『 ゲド戦記 』などは、1968年の初版から、2001年まで出版を重ねていた、超ロングセラー作品です。
『 メリー・ポピンズ 』、『 不思議の国のアリス 』、『 ガリバー旅行記 』、『 オズの魔法使い 』etc…
・・いかがですか? 聞いた事がありますよね?
幼い頃、お母さんが、読んでくれませんでしたか?
小学校の図書室で、胸を時めかせ、少しずつ読みませんでしたか・・・?
寝入る我が子の為に、ベッドの横で、優しく読み聞かせる・・・
それが、ファンタジーなのです。
いつから、肉片が飛び散り、手足が吹き飛ぶカテゴリになったのですか?
子供に読み聞かせるお話しに、血生臭い戦いが、果たして必要ですか?
どうして戦闘シーンに拘るのですか・・?
流血などに頼らずとも、物語は書けます。 ファンタジーも、SFも。
私の拙作に『 銀河エクスプレス 』と言うタイトルのSF作品がありますが、血は一滴も流れません。
『 異世界 』などと、狭い領域に拘らず、自由な想いのままの創作を願うばかりです・・・
全く小説とは縁の無い方の方が、原作の起点としては、白紙の状態で良いのかもしれませんね。 先記した『 不思議の国のアリス 』を書いたルイス・キャロルも、ファンタジー作家ではなく、イギリスの数学者でした。 ・・ちなみに、ルイス・キャロルはペンネームで、本名ではありません。
・・追記となりますが、先記した『 ガリバー旅行記 』は、小人の国に流れ着いた話が有名ではありますが、実は、4章ほどある長い創作物でして、第4章には、磁力を駆使して天空に浮く要塞『 ラピータ 』が登場します。 街を押し潰したりする武器にもなる訳ですが、『 磁力 』により浮遊する設定をしているところから、SFと評価する事が出来ます。 ただ、その章までお読み頂いた方は少数かと存じますので、一般的な認知から( 小人の国の章、のみ )ファンタジー、とさせて頂きます。 悪しからず・・・
次章、『 異世界あるある 』を、お送り致します。
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