その想いに手を伸ばすのは、どちらなのか

時の流れが止まったかのような、不思議な村。
そこで少年は、理解しがたい出来事に巻き込まれていきます。

空の青さ、澄んだ空気、透明でとても冷たい川の水。
その中で、友達と共に過ごす夏休み。
友人達の表情までしっかり浮かぶほど、彼らの生活が目の前に見えてきます。
そして、それを見守る大人達の姿も。
体験した事はないけれど、彼らの日常は壊れ物のように儚く、そして懐かしさに胸が締め付けられます。

そんな日常のほんの僅かな日陰から、じわりと、少年の心を脅かす存在があちらこちらに見え隠れしています。

この村の秘密。
そして、その村に存在する気味の悪い火の見櫓は何を意味するのか?
全てを少年が知った時、何が起こるのか?

少年と共にこの村でゆっくりと過ごすうちに、不思議な世界へ足を踏み入れていきます。
いろいろな所に顔を見せる不思議に、恐怖するかもしれません。
ですが同時に、深く考えさせられる物語にもなっています。

この村で、あなたは何を見つけるのか?
私は、想う事は想われる事だと、そんな事を感じました。
片方の想いだけではきっと、村の不思議は起きなかったのではないかなと、そんな風に思います。

切なく哀しく、そして愛に溢れた作品です。
どうぞ皆様にも、タイトルの意味、そして少年の勇気を、最後まで見守ってほしいです。

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