第3話 爆発と現実世界

ダダダダ、バン!

銃声のような音だが、ここ現実世界なので、そんなことはない。教室へ誰かが走ってきてドアを開いた音だった。


「はぁはぁ、間に合った……」


走ってきてドアを開けたのは香苗だった。遠くから走ってきたようで、息が荒れている。ガンバトルオンラインではセシルという名で呼ばれていた瑠華が話しかける。


「おはよう、香苗。間に合ったんだね」


「うん。危ない危ない、ぐっすり眠っちゃっててさ」


「ところで、ちゃんと課題はやってきた? 今日提出だったはずけど」


課題をやってないのを思いだしたのか香苗は目を見ひらいて、その後に顔を青くする。あわててカバンからノートをとりだすと、さらに顔色が悪くなった。苦笑いしながら瑠華は、慰めつつ自分を守る。


「もう朝の時間もないし、諦めたら? 昨日はちゃんとメール送ったんだけどなぁ」


香苗がため息をついて、先生に報告に向かった。戻って席につくとチャイムが鳴り、本日の学校生活が始まった。






最後の時間のチャイムが鳴って、クラスメイトが帰り始める。香苗も帰ろうとすると、校門で瑠華が待っていた。一緒に帰るようだ。


帰路につき始めると、香苗が疑問を浮かべる。


「ねえセシル、他にガンバトルオンラインをやってる人はいないのかなぁ。ダンジョンや今後に向けて、仲間が多い方が有利だし楽しいと思うんだけど」


香苗から、長くてちゃんとした文を聞いたのが珍しかったのか、瑠華は驚いた。香苗のじと目をいなしつつ間をおいて、そのまともな疑問に答えた。


「えっと、ガンバトルオンラインはマイナーなゲームだから、この学校には私達の他には多分いないだろうね。他のVRMMOをやっている人を誘うか、ゲーム内で仲間を探すか、になるだろうね」


銃で戦うVRMMOは、香苗たちより下の年代か、おじさん世代が多く、さらに数がたくさんあるのだ。香苗は学校で瑠華以外にプレイしている人を探していたのだが、見つからなかった。


「じゃあなんで瑠華はガンバトルオンラインを選んだの?」


「そうだねぇ。1つは、銃の世界の割に景観がいいことかな」


銃で戦うVRMMOはたくさんあり、大体は荒廃した世界とか、最終戦争後の世界とかそんな世界なのだが、このガンバトルオンラインはファンタジー系のような景観で、うっそうと茂った森や澄んだ川が流れている。香苗が前にプレイしていた「カタンヘイムオンライン」にもよく似ていた。


「もう1つは?」


「もう1つは、あんまり有名じゃないこと、かな」


香苗のなんで? という疑問が顔に出たのか、瑠華は話を続ける。


「有名なゲームは強いプレイヤーがたくさんいるから、多分すぐ挫けてやめちゃうと思ったんだ。それに、通信料がかかるところもあってそれでお金を稼ぐ人もいるから。あとはちょうどサービス開始直後に見つけたから、これなら強くなれるな。と思ったから」


「へー。 結構考えて選んでたんだね」


「香苗は前やってたカタンヘイムオンライン、どうして選んだの?」


「え、えーと……ファンタジー感強かったから、みたいな?」


笑いながらごまかしている。前のゲームなんて、爆発の魔法が打てるやつから適当に選んだのであった。なんとか話題をそらす。


「じゃあ、今日も帰ったらすぐ始める?」


「だーめ。また忘れるから課題やってから」


「分かったよぉ。じゃあ、またGBOで!」


そう言うと2人は分かれて家へと足早に向かった。


「あー。今日も爆発楽しみだなー。爆裂爆破で大爆発!」

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