これが生殺しというやつか。


 この作品を読んで浮かんだのは「熱殺蜂球」という言葉だった。
 ミツバチが天敵であるスズメバチから巣を守る為に、集団で取り囲んで蒸し殺すという方法である。
 ……とはいえ、この作品では立場は逆で、集団のスズメバチが一匹のミツバチを取り囲んでいるわけだから、惨さの極みみたいな状態なのだが。

 語弊を恐れず言うのなら、登場する彼女らは「優しい」。ヤンデレ作品にあるような殺傷沙汰にはならないし、主人公をモノ扱い(なんだかんだ見下している)するような扱いもない。
 ただ、手心がある故にじわりじわりと追い詰められていき、対して、彼女らの愛情は底抜けに強まっていくのである。

 前述の通り、熱殺蜂球は巣(の中にいるハチ達)を守る為に行われる方法だ。彼女らは大切な人への愛の為に、彼を取り囲んで抱擁する。どこにも逃れられないように。そして、膨大な熱の中で彼は呻き続けるのだ。

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