ヘリアンサスの花束を、君に。

 主人公の青年には婚約者がいた。しかし、二人の仲は公然なのに、しっくり来ていなかった。そんな中、学校で主人公は後輩に魔法指導をすることになるが、その二人の親密さと、後輩の出自が問題となり、二人の仲はますます気まずくなる。学校でも責められる日々が続き、主人公は婚約を解消し、逃げるように森の砦の戦力として戦地に赴く。この時主人公は使い魔候補として、一匹のある生き物を連れて行くのだが……。
 一方の婚約者は猫の姿になることで、自分の魔力を制御することを覚えつつあった。そんな中、美しい彼女には引く手数多で、側室の話しも舞い込む。しかし忌まわしい過去の記憶を取り戻した彼女は、手紙を残して家出をしてしまう。
 主人公の寄宿舎では、水の精霊が噂になっていたが、主人公はそれに心を動かされなかった。しかし、森で大規模な「氾濫」が起き、主人公は危機に瀕する。そんな主人公を助けたのは、噂の水の精霊だった。一命を取り止めた主人公は、婚約者に、もう一度会う決意を固める。しかし、そこには――。

 文章のはずなのに、気高く香り立つものを感じた一作でした。
 情報過多になりがちな描写と、人間関係が程よく描かれ、
 これほど長文なのに、中だるみも、飽きることも、一切ありませんでした。
 ビロードのような質感で、ラストも最高でした。

 是非、是非、御一読下さい!

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