優しさ、ぬくもりを感じる物語です

【第一印象】
百合小説に関してはこれまでまったくと言っていいほど接点がなかったものの、優しさやぬくもりを感じる物語という印象です。

【特に魅力を感じたポイント】
ふたりが、幼馴染であるという特別な距離感のなかで、互いに親和を深め、確かめ合うようにして、ある種のハプニングをきっかけに想いを通じ合うという展開が素敵でした。
また美波から見た水面はとても無邪気でまぶしい存在で、ヒロイン性の高さを感じました。
ただ、ふたりともごくごく等身大の女性像で、その意味でリアリティがある印象です。
自宅で一緒に料理をして、おしゃべりをする、というロケーションの強みを活かせない場面演出も、かえってふたりの感情の動きを自由にさせているようです。
煙草を控えるように勧める水面の想いも、終盤になって少し別の意味を持って効いてくる点も、工夫を感じました。

【気になった点】
あえて少し気になった部分に踏み込むとすれば、心理描写(特に美波)の点です。
私は百合、もっと言えば同性愛に対して体験がなく、同性愛を扱った作品に触れる機会や習慣もなく、逆に言えば偏見もないつもりですが、主人公のふたりが互いを恋愛対象として好きだと告白する場面では、もう少し彼女たちの心理を深掘りしていただいた方が、より読者の共感と感動を呼べる気がしました。
恐らく彼女たち自身、互いを想い合っているというのは驚きであり、意外であり、喜びもあれば戸惑いもあるのではないかと想像します。
そうした心理描写に時間をつかって、前向きで希望的なラストに展開してゆけるとなおよいかなと思いました。

拙いレビューで失礼しました。
これまであまり縁がなかっただけに、新鮮な気持ちで拝読しました。
ありがとうございました。

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