選択

ネオン

戻れない

Uターンする機会を僕は失ってしまった…。

もう僕は戻れない。

「もう遅いんだよ。」

知ってるよ、そんなこと。

全て僕が悪いから。

あの選択をした僕が馬鹿だったから。

後悔したって意味がない。




僕はただの高校生だった。

たぶん普通の高校生。

親や先生に言われたことをただこなす。

特にやりたいこともない。

将来の夢もない。

いつも言われるがまま。

ただそれはつまらない、つまらないんだよ。

最近、よく思う。

無意味に時間だけがただ過ぎていく。

本当につまらない。

ゲームをしても本を読んでも勉強しても動画を見てもつまらない。

どうやら僕は自分の生活に飽きたようだ。

……。

……何か違う。

そうか、嫌気がさしたんだ。

うん、そっちの言い方の方がしっくりくる。


そんなある日僕に一通のメールが届いた。


件名:やあ!怪しくないから読んでみて!


いかにも怪しいメールだ。

けれど、暇だった僕はなんとなく読んでみた。



君へ


まずは、読んでくれてありがとう!

さて、このメールを君に送ったのは、君をとあることに誘うためだ

こんな怪しさしかないメールを読んだ君は馬鹿か暇人のどちらかだよね〜

そんな暇そうな君!

ぜひこのメールに添付してある地図に記されている場所まで来てね!

日時はいつでもオッケーだよ〜

来るときにメールしてくれれば大丈夫

来てくれれば面白いことが起こるよ〜

どうせ暇なんだからきなよ

こなきゃその退屈な日常から抜け出せないよ

じゃあ、待ってるね!


差出人より



…なんだこれ。

僕が暇人だと決めつけてる。

まあ、暇だけど。

怪しいよな、これ。

なんかやばいことに巻き込まれそうだな。

ただのいたずらメールかもしれない。

けど…おもしろそう…。

久々にワクワクするな。

行ってみようかな…。

地図によると家からそこまで遠くない。

徒歩で行ける距離だ。

ちょうど休みだし、今から行ってみるかな。


少し歩くと目的地付近に着いた。

ここは…路地裏?

つまり、路地裏に入らなければいけないということか。

本当に怪しいじゃん。

取り敢えず路地裏を覗いてみた。

あれ、誰もいないじゃん。

ちゃんとメールしてから来たのに。

やっぱり、いたずらか。

けど、取り敢えず路地裏に入ってみよう。

どうせ何も起こらないだろうから。


路地裏に入って少し進んだ。

何も起こらないな。

よし、帰ろう。

そう思って来た道を戻ろうとしたとき

「やあ!よくきたね!誰も来ないと思ってたから嬉しいよ。」

と、突然背後から話しかけられた。

誰もいなかったはずなのに…。

振り返ってみると背の高いカッコイイ男の人がいた。

楽しそうに笑っている。

どこから現れたんだ、この人。

「あなたがメールを送った人?」

「うん、そうだよ。メール読んだよね、これから面白いことが起こるからね!」

「何が起こるんですか」

「それはね…」

突然、辺りが暗くなり、目の前の人の空気が変わった気がした。

楽しそうに笑っている表情は変わらないのに何故だろう。

とても怖い。

この人からすぐに逃げなければいけないと思った。

逃げなければ。

早く。

怖い。

そう思ってすぐに戻ろうと後ろを振り返った。

しかし、そこには壁があるだけ。

道は無かった。

確かにあったはずなのに何もない。

恐る恐る振り返り、その男の人を見る。

彼は相変わらず笑っている。

「残念〜!逃げられないよ。どうしたの。怖くなったのか、僕のことが。人間の本能が訴えかけて来たのかな?けど、残念ながらもう遅いんだよ。馬鹿だね。知らない人の誘いは断んなきゃ駄目だよ。」

「僕をどうするの?」

僕の目をじっと見つめてくる。

目が逸らせない、動けない。

「どうするか。それは、えっとね。になるんだよ。」

何言ってんだよ、意味わかんない。

「なんで人形になんてならなきゃいけないんだよ!」

不気味で怖いのに何故かまだ目は逸らせないままだ。

引き込まれそうな瞳をしている。

「なんでって、それは、君は面白いものが見たいから来たんでしょ。退屈な日常から抜け出したいんでしょ。それらが全て叶えられるからさ。その代償が僕の人形になること。簡単でしょ。人形になっても人間とはほとんど変わらない。」

この退屈な日常から抜け出せる。

これほど僕が惹かれる誘い文句はない。

なぜだろうか、あいつの言うことを聞いてしまってもイイような気がして来た。

今まで怖いと思っていたのに何故だろう。

「本当に抜け出せる?」

「もちろん!この手をとってくれるなら。」

そう言って手を差し出される。

彼は笑っている。

僕はその手を迷わずにとった。

「契約成立だね」

彼は怪しく微笑んだ。


僕の記憶はそこで途切れた。



しっかし、こいつは馬鹿だ。あんな怪しい誘いにのって。俺の手をとって。まあ、僕の目を見れば断れないだろうけど。

久しぶりにお人形を手に入れられたし、全然いいんだけど。

この首輪をつければ完成!

もう僕には逆らえない人形の完成だ!

今度は長く持たせないとな〜。

この前はすぐに壊れちゃったし。

さて、こいつはいつまでもつかな?



貴方もメールが届いたら、ぜひ誘いにのってみてはいかがですか?

楽しい楽しい事が起こるかもしれないですよ

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