約束の丘
ぼくはルナと約束をして別れた。
「高等学校を卒業したら、約束の丘にUターンしよう」
約束の丘。
夜露に濡れる草の寝台に仰向けになって星座を眺めるのは、とても
生まれ育った国の
そう。ふたりとも魚座だった。魚座のリボンを
ひとりは
不安に羽を震わせていた
ルナは昔の、ぼくみたい。呼吸さえ、ままならない生まれたての
ぼくも
『久し振りだね、サキ。元気かい?
ぼくは無事、高等学校を卒業したよ。
今は天文学を勉強しているんだ。
将来、
ありがとうね、サキ。
きみと暮らした学生生活のおかげで、ぼくは星座に興味を持てた。
弱かった心が強くなった。
不安な夜には魚座のリボンを心に想い描いて、確かにサキと
きみが伯父さんに連れられて行って、数日後に知ったことがある。
幼き日に御両親を
サキは強いね。置かれた境遇に泣きたくなった日もあったでしょう?
ぼくは弱いのに、優しかったサキの
ごめんね。
少し強くなったよ。きみを羽で包む親鳥とまではいかないけれど、兄鳥には成れるような気がするんだ。
ぼく、何が大切なのか分かったんだよ。
教えてくれたサキに逢いたい。約束の丘でリボンを手繰り寄せたい。
心の故郷へUターンしよう。返信、お待ちしています』
控えめながらも、
『ルナ、メールありがとう。
待っていたよ。リボンを手繰り寄せよう。
ぼくらが心の故郷に
約束の丘で、魚座が一等、輝く季節の夜に逢おう』
☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…
そして、ぼくは一足先に約束の丘に着いた。
手足を投げ出して仰向けになる。懐かしい草の香り。
『あと五分で着きます』
心のUターン。想いが通じる五分前。
心臓は
ぼくらは男の子同士だけれど、互いを大切に想い合う心は、恋愛の始まりにも似た
「おかえりなさい」
あの日のように言うんだ。
透明なリボンが夜風に遊ぶ。頬を
-終-
魚座のリボン 宵澤ひいな @yoizawa28-15
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