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4回目でラストです。
さいごの展示は『人形への小夜曲』の主人公・ラルムくんの絵です。
生まれつきの耳朶の欠損を前下がりボブという髪型と雛鳥色のイヤーマフで匿った13歳の少年。
このイラストは連載序盤、心を彷徨わせていたラルムくんを描いてくださっているのですが、曖昧な目線と物憂げな頬杖が、心の迷子を物語っていますね。
異なる土壌に投げ出された少年の心を拾い上げて描いてくださいました。
さいわいなことにラルムくんは、自らを羽包(はぐく)む土壌に恵まれ、遺伝性の病を乗り越え、こどもからおとなへと成長できました。
3回目の展示で御紹介したミコトくんが果たせなかった成長を遂げたのがラルムくんです。
彼等もまた『オフィーリア奏鳴曲』に登場したことを思いますと、イラストが私の内面に与えた影響は大きかったと云えるでしょう。
四枚の絵を此処に凍結して、美術館を閉館します。
おつきあいありがとうございました。
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長い余談になりますが、私はラルムくんと同じ病の家系でした。
それは白百合の病……ぢゃなくて、残念ながら遺伝性の片頭痛です。
この頭痛を持つ人は生まれつき間脳視床下部が敏感らしく、動くと痛みが増して厄介です。
発作時には遮光した涼しい部屋で石のように固まって、水枕と特効薬を重ねて眠るのみ。
個人差はありますが、音や光や匂いに過剰に敏感になり、日常生活に何らかの支障をきたすのが、片頭痛の厄介なところです。
嗚呼、こんなにも日常生活(書く・読む)が困難になるなんて、予想だにしない厄介事でした。
終わらないマスク生活が助長した慢性的な酸素不足、梅雨、ゲリラ豪雨、猛暑、8月に訪れた2度目の梅雨とトリプル台風……令和3年の夏、ドラスティックに変化した気象が脳血管に悪戯を仕掛けてくる時間が長引きました。
特効薬が底を尽くのが早過ぎました。
ついに担当医に「一般内科医のフォローできる範疇を超えています」と哀れまれた挙句、脳神経外科医に紹介状を書かれそうになりながら、すんでのところで踏みとどまっております。
何やら深刻な夏は終わり、季節は巡って、ついに秋。
個人的に一番好きな季節の到来です!
好調ならば、この秋から始めたい連載がありましたが、今は、その時期ではないと判断しました。
と云いますのも、秋なのに片頭痛の負のループを断ち切れないためです。
①視床下部が過敏になり、セロトニンが欠乏して、三叉神経が興奮の末、制御を失う
②三叉神経からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が放出、脳血管を拡張させる
③拡張した脳血管から炎症物質が漏出、三叉神経を刺激して脈打つ頭痛になる
①~③のうち、②段階に効く予防注射が令和3年春から夏にかけて複数、認可されました。
私は②と③のあわいにトリプタンという特効薬を飲むことにより、ループを断ち切ってきましたが、1ケ月に10日を超えてトリプタンが必要な状態は決して良いとは云えません。
そんなわけで、良い状態に戻るための予防治療に励んでおります!
②段階に画期的に効くと評判の予防注射は万単位に高額でした。
高額でも何でも、この痛みから解放されるならば打ってほしいのですが、予防注射は「ひととおり内服の予防薬を試して効果が無かった患者さんの選択肢」なのですね。
つまり、予防注射に辿り着くには、内服の予防薬を2~3ヶ月単位で服用して様子を見る必要があるのです。
現在、私は①の視床下部の過敏性に効くかもしれない予防薬を飲みながら、生活を改善して脳内セロトニンの質と血管を安定させようとしています。
片頭痛の有病率は日本国で840万人と推定されており、コロナ禍による生活形態の変化(主にリモートワークとマスク着用の義務)で潜在患者数は増加の傾向にあるもよう。
根底には、情報過多の末に脳がオーバーフローして機能低下を招く「脳疲労」問題も絡んでいるでしょうか。
とりわけ片頭痛体質の私にとっては、ブルーライトやLEDの発する光が脳へ与える刺激は随分、強過ぎると今更に気付きました。
片頭痛は副交感神経優位による「リラックス」でも起こりますが、交感神経優位が続くことによる「過緊張」が「休まらない脳」を持続することによっても起こってしまいます。
脳を休める時間。ぼーっとする時間。それが必要であると感じています。
さまざまなことが、めまぐるしく変わる世ですね。
その変化のすべてに対応しようとすると疲れてしまうのは私だけではなく、きっと皆さまも少なからず感じておられることでしょう。
御自身の時間を維持して大切に、しあわせに、お過ごしくださいますように。
脳血管の状態が安定しましたら、また書いたり読んだり楽しめるようになるはず。
そんな期待を沢山に持っています!
当面、返信が出来ませんので、一時的にコメント欄を閉じました。
何卒ご容赦くださいませ。
是非また、お会いしましょう❤