とぼけた立ち居振る舞い。
正体を掴ませないモボの詐欺師。
まるで鵺のようではありますが、
その心底には、確かに温かい
血潮が通っております。
昭和初期の、
大陸や本土の情景、庶民の在り様を
この物語は皆様の頭の中に鮮やかに蘇らせるに違いありません。
激動の時代を迎えるその少し前。
後代、一時の平穏に見えるその時分でも、
人は必死に生きておりました。
過酷さは、持たざる者であれば時を選びませぬ。
そんな中でその男は、
人々に何を与え、どう生きたのか。
その結果がどうであったのかは、どうぞ皆さん、
あなた様ご自身の眼でお確かめ下さい。
タグに昭和カストリ等と入ってはおりますが、
それは偽り、上品な味がします。
さあさ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。
これを見ないは勿体ない勿体ない。
痛快なる一大詐欺師の活躍を是非御覧下さい。
主人公は世間様には顔向けの出来ぬ仕事で生業をすすぐ人物。詐欺師。
しかし、この詐欺師、詐欺は詐欺でもただの詐欺師じゃない。一本筋金の入った大詐欺師です。
その仕事は壮大で繊細ながら、爽快でスカッとする男前な仕事ぶりです。詐欺師ではあっても世間様に後ろ暗いことはない見事な快男児ぶりです。
しかも、相手にするのはとんでもない大物揃い。陸軍さんを騙したと思ったら、大会社の社長を狙い、最後は警察に巣食うケチな悪党退治!どれも気持ちがいいまでに爽やかで心地よいエピソードです。
作者の丁寧簡潔な筆致が見事に過不足なくその姿を映し出し、頭の中に情景が見事に再現されます。
今回、スリグループの孤児たちを助けた主人公ですが、これで終わりなの?もったいない!もっともっとさらなる活躍を見てみたい。続編の執筆を切に願います。
楽しませていただきました。ありがとうございます。
昭和という、戦前戦中という、ある意味猥雑な時代、大陸に、東京に、舌先三寸で駆けめぐる男がいた。
奴の名は――高見半次。
その舌先は強欲な悪党からは富を掠め取り、力一杯生きる者には救いを齎す――けれども彼は決してそうとは主張しないであろう。
なぜなら、彼は――詐欺師なのだから。
詐欺師が詐欺師であると言うであろうか?
ましてや、義賊めいた男である、と。
大陸を舞台にしたスケールのある話もあり、戦前の東京上野浅草を舞台にした大芝居ありで、紙の本であれば、頁をめくる手が止まらない、という感じのお話です。
大詐欺師に敬意を表して申し上げると――
「騙された」と思って、一度、読んでみませんか。
ではではノシ
大詐欺師の高見半次がついにお縄について、その過去を語り出すところから物語は始まります。
日中戦争初期(だと思うのですが……)、ひょんなことから軍医のふりをすることになった彼が舌先三寸と度胸であっと驚く結末を迎える第一話。
元女衒の社長を引っ掛ける彼の駆け引きと、最後に明らかとなる真意が見事な第二話。
そして、行き場を失った子供たちとスリの大親分たちのなんとも切なくも心温まる第三話。
どのお話も、いつもは飄々と——あるいはヘラヘラとしてさえいる半次さんの、時折見せる苛烈な怒りと、そこから鮮やかに事態を解決に導く手腕、そして、それだけでなく時に彼を救い、彼に救われた人々との関わりが何とも心に響きます。
どんなに暗い世の中でも、悪人もいれば、善人もいる。
暗いばかりでなく、救いの手を差し伸べてくれる人が現れることもあるのだ、と温かな希望を感じさせてくれる物語でした。
おすすめです!