エピローグ

139

 ―クリスマスイブ―


 創ちゃんは今日もバイト。

 私は世界一不幸なクリスマスイブの夜を迎えた。


 つまんないよ。

 つまんないよ。

 つまんないよ。


 午後六時、玄関のチャイムが鳴った。

 ママが予約したクリスマスケーキの配達に決まってる。


 玄関のドアを開けると、薔薇の花束を持ったサンタクロースが立っていた。


「ママが注文したのは、苺の生クリームのクリスマスケーキです。配達先を間違えてますよ」


 サンタクロースはその場に跪き、薔薇の花束を私に渡した。そしてポケットから白いラッピングに赤いリボンのついた小さな箱を取り出した。


 これって、配達ミスをした花屋さんのお詫びの品かな。それとも一口サイズのミニケーキ?


「随分、小さなケーキですね。小人の国と間違えたの?」


「ばーか、こんなに小さいケーキはないよ」


「……そ、創ちゃん!? やだ、創ちゃんなの?」


 サンタクロースに扮していたのは、大好きな創ちゃんだった。


「創ちゃん、どうしたの? サンタクロースのバイトもしてるの?」


「違うよ。今夜は礼奈だけのサンタクロース。これはクリスマスプレゼントだよ」


「創ちゃん……」


 両手の上にチョコンと乗せられた小さな箱。ラッピングを解くと、中から出てきたのは白いケース。


 ケースを開けると、プラチナのリングにハート型にデザインされた小さなルビーが輝いていた。


「メリークリスマス、礼奈」


「……ふえっ、創ちゃーん」


 半べそで創ちゃんに抱き着いた。サンタクロースの白い髭が頬にあたり、ちょっとくすぐったい。


 バイトばかりしてたのは、このリングを買うためだったんだね。


「創ちゃんありがとう。だーい好き!」


「そんなこと、ずっと前から知ってる」


 創ちゃんはクスリと笑った。


「礼奈から……創ちゃんにクリスマスプレゼントあげる」


「俺に? なにをくれるの?」


 創ちゃんに、私からのクリスマスプレゼント。


 聖夜に永遠の愛を誓う、甘いファーストキス。


 二人のシルエットが……。

 優しく重なった。


 





 ―THE END―

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可愛い姫に誘惑されて困っています。 ……と、見せかけて本当はサイコーに幸せ。 ayane @secret-A1

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