【15-9】父娘
【第15章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927859351793970
【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625
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「
帝国暦384年2月下旬、先任参謀・セラ=レイスは、総司令官・ズフタフ=アトロンの宿舎へ、始業前から呼び出されていた。
帝国軍が関所とともに砦の破却まで進めているとの情報が、総司令官の耳に入ったようだ。相変わらずもそもそと口ひげを動かす老将のしゃべり声は、どうにも聞き取りにくい。
【15-3】散歩 上
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700428436065446
ノーアトゥーンに進駐した帝国軍は、中央礼拝堂だけでなく、ヴァナヘイム国の有力領主の邸宅も接収した。
ストレンド郊外の戦いで行方不明になったヴァ軍・ベルマン中将の屋敷に、帝国東征軍・ブレゴン中将が止宿するなど、ヴァ国の旧領主邸は帝国の将官用宿舎とされたのである。
同じくストレンドで戦死したブリリオート少将の私邸は、このアトロン大将の宿舎とされていた。
【13-21】悲報
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817139555879922192
しかし、老司令官は、屋敷内にあった豪奢な家具や寝具を一部屋に押し込めてしまうと、野戦で用いていた事務机や簡易ベッドを持ち込んでいる。
服装も常に薄汚れた軍服をまとい、有事の際に備えているそうだ。
彼の生真面目さは嫌いではないが、自らもそれを実行しようという殊勝さは、レイスにはない。
それにしても、旧持ち主の華美な壁紙やカーテンそれに照明は、機能の必要性から残されており、現持ち主の野暮ったい机や椅子それに書棚とは、とにかくバランスが悪い。
紅髪の青年将校は、室内を
白髭の老司令官は、
どうやらこの総司令官は、和議の条件にはない砦破壊の黒幕が、先任参謀であることに気付いているようだった。
レイスの姑息なやり方は、アトロンの騎士道と相容れないのだろう。
【14-26】和議締結 《第14章終》
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「手違いであると思われますので、至急、担当部署に確認し、しかるべき対応を致します」
「……」
必要以上に
室外には、キイルタ=トラフが待っていた。
「お疲れさまでした」
この美しい副官は、研ぎ澄まされた敬礼をする。
「やれやれ、老人の説教など、朝から聞きたくないものだ」
レイスは、大きく首を回した。まったく、
確かに、今回の砦解体騒動のみならず、アトロン老将にはヴィムル河流域会戦の折、作戦発動を止められかけたことがある。
【2-6】欲面
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427257943064
確かに、レディ・アトロンとは、イエロヴェリル平原撤退の折、負傷者の処遇について意見が相容れなかった。
【8-16】遅々として
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927863171549036
だが、それらの出来事も含めて、レイスは総司令官を敬っており、戦死した女連隊長を慕っていた。
彼のもっとも近くで過ごしてきた副官のトラフは、そのことを十分に心得ているようだった。灰色の瞳にやや柔らかな色を浮かべて、上官のぼやきを聞き流すほどに。
序
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816452221247529836
【6-13】対局 下
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927862171047596
だからこそ、彼女は念のため確認だけはしてくる。
「形だけでも対応いたしますか」
「不要だ。ヴァナヘイムのヤツらが立ち上がるまで、このまま『手違い』で押し通す」
レイスは力強く軍靴を進めながら、振り向かずに言い捨てた。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
レイスはアトロン父娘のことを敬っており、そんな上官をトラフは慕っている――良い上下関係だな、と思われた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
レイスたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「良識人 上」お楽しみに。
「このまま、この国が
「フロージ様、是非、我々とともに立ち上がってください」
「ワシは、軍事面においては素人だ」
所領持ちの貴族大臣とは異なり、フロージは領民も兵馬も所有はしていない――これまで何度も繰り返された議論であった。
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