【15-10】良識人 上
【第15章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927859351793970
【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625
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「……そうか、
「このまま、この国が
「フロージ様、是非、我々とともに立ち上がってください」
帝国暦384年2月中旬、ヴァナヘイム国農務相・ユングヴィ=フロージの広くもない屋敷に、軍服姿の者たちが集っていた。
彼らは平服姿の大臣を中心に、国政について議論を重ねていた。
この部屋にはもう1人、平服姿の男が居た。しかし、彼は議論には加わらず、農務相夫人の
平原諸都市に飽き足らず、帝国将兵による王都での略奪行為、領民への暴行・
数多押しかけた帝国兵が、無銭飲食を繰り返した挙句、廃業に追い込まれる飲食店は後を絶たない。収穫間近の果物を帝国兵は容赦なく食い散らしていき、農業を断念する者も現れていた。
それらをイフリキア大陸で作物を食い尽くす、
他にも、公共の施設・広場から旧領主私邸の占拠。さらには郊外の
何よりこの国の守護者・エーシル神への
【15-5】人探し 上
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700428436437790
帝国弁務官事務所が、ヴァナヘイム国の行政・司法を停止させたことで、これらの悪行には、ますます磨きがかかった。
嘆かわしいのは、強盗・強姦を模倣し人身売買等を
上記のように振る舞う帝国人(と一部ヴァナヘイム人)を
上記のような帝国人(と一部ヴァナヘイム人)の振る舞いが裁かれることはなくなった。
ヴァナヘイム国民衆を苦しめたのは、行政・司法機能の停止だけにとどまらない。
関税が事実上撤廃されたことを幸いに、帝国をはじめ各国の工業製品が
瀕死の状態で
大きな柱時計が午後8時を告げた。3度目ともなるこの日の議論も、既に2時間を超えようとしていた。
しかし、屋敷の主人からは、客人たちほどの熱意を感じられない。
「ワシは、軍事面においては素人だ」
しかも、彼は南方の街・フレイの代議士である。
所領持ちの貴族大臣とは異なり、フロージは領民も兵馬も所有はしていない――これまで何度も繰り返されてきた議論であった。
だが、客人のうち、元副司令官・スカルド=ローズルや元先任参謀・シャツィ=フルングニルは、この日も諦めずにくらいつく。
「しかし、次官が往来に倒れてから、軍務省には、この未曾有の事態を乗り切れる人物はおりません」
「いまやこの国に、良識ある指導者は、農務大臣をおいて他に見当たりません」
「おいおい、クヴァシル君やワシが『良識人』になってしまったら、いよいよこの国もおしまいだよ」
フロージは、胡麻塩短髪の頭を撫でつつ、カップを口に運んだ。
ローズル・フルングニルたちも、それに倣うようにして、農務相夫人が淹れた紅茶を口に含む。
琥珀色の液体は既に冷たくなっており、たちまち渋みが彼らの口内に広がる。
「ワシなどよりも……」
軍服姿の客人たちに向けて、農務相はへの字にした口を再び開いた。
「お前たちは、ついこの間まで、我が国史上最高の指揮官の下で働いておっただろうが。その存在を忘れたのか」
「え……」
「ま、まさか……」
「ミーミル将軍はまだ……」
「ああ、まだこちらにおるはずだ。軍務省管轄のいずれかの官舎に閉じ込められているようだが」
フロージからそのように告げられるや、事情を呑み込めないミーミルの元幕僚たちは、はじめ驚き、次いで喜色に包まれた。
アルベルト=ミーミル退役大将は、とうの昔に帝国側へ差し出された――この場の者たちはみなそのように思い込んでいたからこその反応であった。
「『軍神・ミーミル』は、まだこの国の民衆から根強い人気があるからな。それを帝国側に引き渡す役目なんぞ誰も負いたがらないのだろう」
農務相は、皮肉っぽく笑った。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
ミーミルキターーーーーー!!!と思われた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758
フロージたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「良識人 下」お楽しみに。
再び夫人の表情に柔和な笑みが差し込んだのと、農務相が口を開いたのは同時であった。
「……アルベルト君にとっては、迷惑な話ではないのかと思ってなぁ」
「え……」
独り言のような小さなつぶやきだったため、元対外政策課長は危うく聞き漏らすところだった。
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