【15-5】人探し 上

【第15章 登場人物】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816927859351793970

【地図】ヴァナヘイム国 (13章修正)

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330651819936625

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「ところで、ミーミルの身柄引き渡しについて、まだ申し入れはないのか」


「ぐずぐずしているようなら、こちらから1個中隊を送り込んでやれ」


「やつらの議場に歩兵を踏みこませて、締め上げてやろう」


 帝国暦384年2月17日、ノーアトゥーン中央礼拝堂では、帝国軍の幕僚会議が開かれていた。



 帝国東征軍は、エーシル教総本山を占拠し、そこに総司令部を置いている。


 ヴァナヘイム国各地に展開していた帝国軍各隊の将軍・参謀たちが一同に会したため、王都最大の礼拝堂も、やや手狭に感じられた。


 堂内にスペースを少しでも確保するため、書架、演壇、長椅子など木製の構造物はすべてはぎ取られた。


 それらは、整然と収められていた経典もろとも、城外に展開する帝国軍各部隊のに回された。


 礼拝堂中央に据えられていた女神エーシルの巨大な木像も撤去され、裏庭にて解体後、同様の運命をたどった。


 年始以降、王都周辺は冷え込む日が続いている。


 エーシル教の教本や木像の取り扱いについて配慮するよう、総司令官・ズフタフ=アトロン大将の名でお触れが出されていたが、太陽信仰の帝国将兵たちからは黙殺されていた。



 旧礼拝堂に置かれた総司令部にて、帝国東征軍将校たちが議論を重ねている。


 王都ノーアトゥーンでの略奪行為は、総司令部から禁じられたが、帝国諸将は不満の色を表には出していない。


 イエロヴェリル平原再北上の折、ヴァーラス城をはじめとする諸都市で乱取らんどりを繰り返し、存分に「物欲」を満たしていたためだろう。


 「物欲」を満たした帝国将校たちが、次に欲していたのは「名誉欲」であった。


 彼らにとって、ヴァナヘイム軍総司令官・アルベルト=ミーミルの身柄確保が、目下最大の関心事だった。



 ヴァ軍の代名詞となっているミーミルは、ケルムト渓谷から撤収後、消息を絶っている。


 その行方は、帝国はおろか各国における為政者・民衆の耳目を集めており、彼を捕縛した者は、五大陸の新聞各紙によって、顔と名前を大々的に報道されることだろう。


 何より、帝国東部方面軍のスポンサー・アルイル=オーラム上級大将の覚えやめでたしである。


彼奴きやつの身柄引き渡しの際は、このエイグン=ビレーが、委細引き受けさせていただこう」


「しかり!さしあたって、このゲイル=ミレドが直属部隊を投入し、ミーミルが隠されていそうな場所を、しらみ潰しに当たってご覧にいれる」


 ミーミルの身柄は、立身出世を望む者にとって垂涎すいえんの的であった。



 まして、ミーミルの前に不覚を取った者たち――


右翼在陣の際に自軍を粉砕されたビレー中将・ミレド少将

【8-26】陰日向 下 第8章 終

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夜襲という夜襲において、すべて裏をかかれたブランチ少将とその子息たち

【11-7】夜襲 ④ 終結

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陣立て合戦に敗れ、正面突破・背面攻勢を許した上、ケニング峠に突き落とされたルーカー中将

【12-14】ケニング峠の戦い 6

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330649172843400



ドリス城塞を焼き払われた上、脱出の折に多大の被害を強いられたモアナ准将

【13-48】消し炭 《第13章終》

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330652693637302



――などは、恥辱をそそぐために、また、派閥頭・ターン=ブリクリウ大将の信頼回復のために、躍起になっていた。


帝国東征軍 組織図(略図③)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16817330653606087372






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


「ミーミル被害者の会」に所属する者は、すごい数にのぼるなぁと思われた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします

👉👉👉https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758


ミーミルたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢



【予 告】

次回、「人探し 中」お楽しみに。


「ミーミルさんをどこに隠しているのでしょうか」

レクレナの質問は核心をついていた。


彼を捕まえてしまえば――宝剣を取り上げてしまえば――審議会は詰むのだ。


「さてな。だが、この大して広くもない王都のどこかにいるんじゃないか」

そう言うや、レイスは真剣な表情で周囲を見回し始めた。案外、その辺りを歩いているかもしれんぞ、と。

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