風を待つ街

作者 juno/壱岐みぞれ

もどかしさでゆるやかに加速する彼女と彼女の物語

  • ★★★ Excellent!!!

中四国で活動しているバンド、そのベース担当の高崎初音は、恋人である神瀬多喜と日々を過ごしている。特筆するようなことのない、しかしかけがえのない時間を味わい、噛みしめ、時に噛み殺しながら。

なにより初音さんと多喜さんの距離感に目を惹かれます。同性だからということもあるのですが、彼女たちは互いに対してなんともいえないもどかしさを感じているのですよね。彼氏彼女のような収まりのよさがないから、ふたりは収まりどころを探り合うのです。それを直接的な駆け引きでなく、煙草やひとつのワードを基にしていく。まさに匂わせるのですよ。それによって機微が表され、詰まりきっているはずの距離がさらに詰まって、溶け合う感じ。恋は付き合うまでが華となりがちなのに、ふたりの恋はさらに大きく花弁を拡げて匂い立つのです。これは愛だなと、思わずうなずかされました。

文章の香りをお楽しみいただけるこちらの一作、ずいとおすすめさせていただきます。


(「地方発ドラマ!」4選/文=高橋 剛)

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