第2話 ショートホラー「あなたの彼女」…伝染


柴崎渡の腕の字は、どんなに洗っても消えなかった。


いつみ…。


その字を見る度に、抹殺したい衝動が、柴崎を襲った。


ラインをいじっていると、「待島いつみ」という友達申請が見えた。

こいつだ…。


柴崎は、その友達申請を、抹消した。


その日から、数日後。


柴崎は、「待島いつみ」という一冊の本を眼にした。


こいつが、俺に…。


柴崎は、その本を、逆さまに本棚に戻した。


その日から、また数日後。


テレビ欄で、「待島いつみ」の字を眼にした。


「待島いつみ」…。


リモコンを持つ手が、勝手に動いた。


「待島いつみさんでーす。」


それは、ものすごくかわいい少女だった。


「今度、スターレコードから、デビューされます。」


えええええ?


「タイトルは、私を忘れないで。」


皆さん、買ってくださいねー。


アナウンサーの声が遠くで響いた、柴崎渡だった…。



―完―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショートホラー「あなたの彼女」 棗りかこ @natumerikako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ