第3話 もし人間が分裂だったら

 ある日、鈴木蓮は体がむずかゆくなったのを感じた。

「あ、きちゃった」

 蓮は阿呆ではない。

 そのむずかゆさが何を意味しているかを知っていた。

「ごめん! きた!」

 周囲にいる友人たちに、そう告げる。

「え、来たの?」

「あ、来たんだ!」

 みんなも、蓮の体に何が起こるかがわかるのだ。

「今日はみんなでお赤飯だね」

「蓮が初めてかぁ」

 みんなどこかのんきにそういっていた。

 一方、蓮はすぐに服を脱ぐ。

 上着、ズボン、シャツ、パンツ、全部脱ぐ。

 全裸だ。全てをさらけ出す。

「おっ、確かに線が出てる!」

「蓮、来るぞっ!」

 みんなが口々にそういった、その時である。

 パキン。

 そんな、骨が割れる音がする。

 連の体は正中線から真っ二つ。断面は薄く丈夫な膜で覆われている。

「おー、やべ初めて見た」

「この膜から新しいからだができるんだね」

 なんて口々に言いながら、みんなで蓮の半分を手分けして持つ。

 もう半分も、別の友人たちが手分けして持つ。

 帰ったら、涼しいところに連を置かなくてはいけない。涼しく、清潔な場所でこそ分裂途中の人間は健やかに増殖できるのだから。

 手軽だが、めんどくさいのである。



          了

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